Vol.71 2016 WINTER

身も心も!現代アートに恋い焦がれて −利岡コレクション+大分アジア彫刻展

日本版「ハーブ&ドロシー」!?
人生を楽しませる現代アートコレクション

 利岡誠夫さん、御年89歳。現在、大阪在住の利岡さんは関西のギャラリー街で名の知れたアートコレクターです。1980年代後半からこれまでに収集した作品は400点以上。それが2013年、縁あって大分県に寄贈されました。
 大富豪でもなければ画廊の店主でもなく、ごく普通の会社員だった利岡さんはただ心からアートが好きで、恋い焦がれて、感性の赴くままに作品を購入したそうです。まるで、気に入った洋服や雑貨を気軽に買うように。
 ニューヨーク在住で、郵便局員と図書館司書だった夫婦が世界屈指のアートコレクターになったドキュメンタリー映画『ハーブ&ドロシー』が世界中で大ヒットしましたが、利岡さんは、まさに日本のハーブ&ドロシー。その楽しいコレクションの中から今回、約120点を一挙にお披露目する展覧会を開催します。加えて、今年で第13回を数える「大分アジア彫刻展」の近年の入賞作品も同会場に展示。その見どころを、大分県立美術館学芸員の吉田浩太郎さんに聴いてみました。

1.四谷シモン《天使の羽》1992 2.《カチーナ人形》 3.丸山直文《無題(少年)》2000 4.藤本由紀夫《PACKED DISK 1981-1992 OLIVIER MESSIAEN/QUATOUR POUR LA FIN DU TEMPS SIDE 1》1992 5.高橋信行《ドイツ風の河》2003 6.中西夏之《白、紫、黒 菱形S.f.f-2》2009 7.坂井淑恵《おうち》2012 8.丸山直文《無題‐Berlin》2000 9.菊畑茂久馬《月光 No.103》1986 10.居城純子《N35.41.44 E139.38.00》2004 11.赤松玉女《花の種、小屋の前》2012 12.廣江友和《twin towers》2008 13. 安喜万佐子《北緯52度西経118度の像》2009

Q1 「利岡コレクション」って、何ですか?

現代美術コレクター、利岡誠夫さんが私財を投じて収集したアートコレクションのことです。利岡さんはかつて、製薬会社に勤める一般的な会社員でした。初めてアートに魅かれたのは戦時中、疎開先で先輩が持っていたセザンヌなどの画集を観たときだそうです。そして1980年代後半から本格的に収集を始め、仕事で国内あちこちに出張する傍ら、地方のギャラリーを訪ね歩き気に入ったものを購入。気がつけばその数は、400点以上も集まっていました。

Q2 コレクションが大分県に寄贈された理由を教えてください。

利岡さんはかねてから現代美術家の岩澤有徑さんと親交がありました。岩澤さんは、日田市出身の岩澤重夫画伯のご長男です。初めて利岡さんのご自宅を訪ねると、「手が震えるほど素晴らしい作品ばかり」を保管した段ボールが3DKのアパートに所狭しと並んでいたとか。ご高齢になった利岡さんはそれを「作家に返そうと思っている」とおっしゃる。「もったいない!」と考えた岩澤さんから、大分県に寄贈の打診をいただきました。そして、新しい大分県立美術館が建築中の2013年、寄贈が実現したのです。

Q3 今回はどんな作品が展示されますか?

寄贈された作品は全422点。そのうち約120点をピックアップして公開します。コレクションは、南アメリカやオセアニアの部族によるプリミティブアートのほか、大部分がここ20〜30年の間に活躍している作家の現代アート作品です。平面も立体もありますが、30センチ四方くらいの小さな作品が多く、コレクションとしてはこぢんまりとしています。ですが、逆にそれが親しみやすく純粋に「面白い」「きれい」と感じられるものばかりです。

Q4 どんな風に鑑賞すると面白いですか?

現代アートというと難しいイメージをお持ちの方もいらっしゃると思いますが、このコレクションは利岡さんがあくまでも「自宅に飾って楽しむこと」を目的とした作品群です。作品を見て「面白い形だ」「きれいな色だ」などと感じながら集められたものばかり。つまり、みなさんと同じ目線のコレクションなので、難しく考えず純粋に素材や色、形の面白さを楽しんでみてください。また、作者はバラバラですが、収集家もまたアーティストです。全体を見れば「利岡ワールド」が広がっていますから、それを五感で感じていただきたいと思います。

Q5 「大分アジア彫刻展」とは?

豊後大野市出身の彫刻家・朝倉文夫の功績を讃え、1992(平成4)年から隔年開催している国際彫刻展で、今年、第13回を迎えます。現在は日本、マレーシア、韓国、中国などアジア15カ国から作品を公募し、新人彫刻家の登竜門と呼ばれるまでに育ちました。その近年の受賞作品を今回、利岡コレクションと同時に展示します。近年の彫刻は素材も幅広くインスタレーションも登場するなど表現方法はさまざまです。世相を反映していたり、海外のアーティストならではの視点が見えたり、これも興味深い現代アートのひとつ。利岡コレクションと比較してみるのも面白いですよ。

1.サニル・ビンダーニ《IT Baby》第12回 大分アジア彫刻展(2014)優秀賞 2.森貴也《境界》第11回 大分アジア彫刻展(2012)大賞 3.佐々木昌夫《意味の穴 2》第11回 大分アジア彫刻展(2012)優秀賞 4.張強《動物先生》第12回 大分アジア彫刻展(2014)優秀賞 5.浅野弥衛《untitled》1966

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