Vol.70 2015 AUTUMN

バレエ『ドン・キホーテ』全3幕

公演レポート 首藤康之演出・振付 バレエ『ドン・キホーテ』全3幕

作家・舞踊評論家 乗越たかお

   世界的に活躍するダンサーの首藤康之が出身地の大分で全幕バレエの演出・振付をすると聞き、東京から駆けつけた。

 まずは100名を越える「おおいた洋舞連盟」のダンサー達である。群舞といいソロといい、じつに高水準で、大分の舞踊文化の底力を見せた。地元選出の主役・佐藤香名もキトリとドゥルネシア姫という二役を演じ分け、喝采を浴びた。バジル役の福岡雄大は新国立バレエ団のホープである。この二人のパ・ド・ドゥは、困難をはねのける心が熱く通い合うものだった。さらに井澤駿と松田彩のカップルも若々しく舞台を盛り上げた。これが森口真司指揮のフルオーケストラで見られたのだから、贅沢な舞台である。

 本作は「バジルとキトリの恋愛話と踊りがメインで、ドン・キホーテは狂言回しの添え物」とされがちだが、首藤は「物語の復権」を図った。スカーフを鍵に人間関係を整理し、全てを1日の出来事にするなどの工夫を凝らす。とくにマイムカンパニーCAVA(さば)の起用は炯眼だ。丸山和彰(ドン・キホーテ)と藤代博之(サンチョ・パンサ)に加え、黒田高秋(ロレンツォ)、細見愼之介(ガマーシュ)の四人が、物語の魅力を立ちあげ、作品全体に新たな息吹を吹き込んだのである。

 華やかな一幕のあと、二幕ではモノクロの陰影の世界。さらに夢のシーンも、美しい群舞とドン・キホーテの哀愁が胸に迫る。続く第三幕は見せ場の連続で、踊る喜びが爆発した。特に最後のフィナーレは、ヨーロッパのオペラハウスと同様「我々の街の芸術を愛する」という幸せな空気に包まれたのである。

 最近盛んに「地方創生」といわれるが、筆者は「地方」という言葉が好きではない。それは「中央」に対置される言葉で、もう古いからだ。今は各都市から直接世界へつながる時代だ。とくに大分は東京よりもアジア各国に近いという「地の利」がある。ぜひこの作品を大分県民の財産として踊り続け、作り続けてほしい。本作は、そういう大分の力もまた見せてくれたのである。

LOOK BACK Don Quixote

楽しさと感動を与えてくれた「ドン・キホーテ」の舞台を、写真でたっぷりと振り返ります。

約1時間前に開場。
わずかな当日券もすぐに売り切れ、客席は満員に

オーケストラピットが設けられ、地元有志による
「ドン・キホーテのための特別オーケストラ」がスタンバイ。
生演奏と踊りの息がぴったりと合っていたことにも感動

エドツワキさんによるメインビジュアルと
題字がスクリーンに映し出されるという演出。
ドン・キホーテとサンチョ・パンサが
旅に出るシーンとエンディングでも登場しました

ドン・キホーテが夢を見ているシーン。
空想上のドゥルシネア姫に青いスカーフをもらいます。
夢の中の世界が美しい照明で表現されていました

夢から覚めると、首に本当に
青いスカーフが巻かれていたことから
ドゥルシネア姫を探す旅に出る
ドン・キホーテと
従者のサンチョ・パンサ

場面はバルセロナの広場へ。
大分のダンサーたちがたくさん登場

広場は闘牛士のエスパーダと
その恋人で踊り子のメルセデスなども登場し、賑わいます

パントマイム集団「CAVA(サバ)」の
コミカルな演技が笑いを誘います。
ドン・キホーテはキトリをドゥルシネア姫と勘違い

ロレンツォがキトリと結婚させたいのは、金持ちのガマーシュ

でも、2人はキトリのお父さん・ロレンツォから
結婚を反対されています。
主役のバジルを素敵に演じる福岡雄大さん

愛し合うキトリとバジルが登場!
2人のパ・ド・ドゥが何度も客席を魅了しました

色のあるキトリ役を演じ、
観客を虜にした佐藤香名さん

二人の息もピッタリ!

途方に暮れたバジルが自殺…実は狂言!

2幕ではシンボルの風車が登場。
駆け落ちしたキトリとバジルは
ロマ(ジプシー)の野営地にたどりつく

風車を悪魔と勘違いして突進した
ドン・キホーテは頭を打って再び夢を見ます。
幻想的で美しい群舞が見どころでした!

酒場に戻ってきたものの
ロレンツォに見つかり、
さらわれてしまうキトリ

大分のダンサーたちも日頃の成果を存分に発揮!

ドン・キホーテの仲裁で
無事に結婚できたキトリとバジル。
結婚式のシーンでフィナーレ。
カーテンコールには首藤康之さんも登場。
鳴りやまない拍手に何度も応えてくれました

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