Vol.69 2015 SUMMER

Don Quixote

首藤 康之 Yasuyuki Shuto 構成・演出・振付

子どもからご年配の方々まですべての人が楽しめるバレエです。

バレエ 「ドン・キホーテ」とは?

 スペインの小説家、ミゲル・セルバンテスが1605年に書いた物語を原作として、1869年にボリショイ劇場が初演しました。音楽はレオン・ミンクス作。物語は、騎士道物語に傾倒するあまり、空想と現実の境界がわからなくなってしまったドン・キホーテがサンチョ・パンサをともなって遍歴の旅に出るところから始まります。そこに宿屋の美しい娘・キトリと恋人・バジルのラブロマンスが交差しながら進んでいく、コミカルなシーンあり、感動ありの恋と冒険の物語です。

 大分県立美術館開館記念公演として、約2年をかけて制作が進められてきたバレエ「ドン・キホーテ」。5月には出演者全員が参加する集中レッスンが行われ、いよいよ舞台の全容が見えてきました。演出・振付を手掛けたのは、大分県出身の世界的ダンサー、首藤康之さん。いったい、どんな新しいバレエを魅せてくれるのでしょう?

舞踊家として活躍する首藤さんですが、
これまでにバレエの振付や演出を手掛けたご経験は?

 僕は笠木啓子バレエ研究所の出身で、その50周年の記念に「くるみ割り人形」の演出をさせていただいたことはあります。ですが今回のような大掛かりな舞台の振付・演出は初めて。新たな挑戦への第一歩なので、何か自分のインスピレーションの源となるイメージが必要だと思い、友人のエドツワキさんにメインビジュアルをつくってもらうところから始めました。

チラシやポスターに使われている絵ですね。

 ドン・キホーテは、騎士道物語に夢中になりすぎて、現実と空想の境目がわからなくなってしまった人物。僕は彼に、夢を追いつづけて、でもそれをまわりから認められないせつなさを感じます。今回のバレエではそのせつなさを伝えられたらと思っていますが、エドさんの絵にもそのせつなさが表れていて、とても気に入っています。

昨年の4月にダンサーを選出するオーディションがあり、秋からお稽古がスタートしましたが、どのような演出を考えていますか?

 バレエを観ているとき、物語のなかの時間経過が気になることがよくあります。あるシーンが次のシーンに移るとき、何時間後のことなのか、それとも1週間経った後のことなのか? だから今回、僕のドン・キホーテはすべてを1日の出来事にしてしまおうと思ったんです。お稽古では、「これは何時何分のシーンです」という風に伝えながら振り付けをしました。オーディションには100人以上もの方が参加してくれて、とても嬉しかったですね。主人公のキトリ役には大分から佐藤香名さんを、その相手のバジル役は新国立劇場バレエ団のプリンシパルである福岡雄大さんにお願いしました。

楽しい舞台になりそうですね!

 最初に「せつない」と言いましたが、ドン・キホーテのストーリー自体はとても楽しいものです。男女のラブロマンスを中心に展開していくのですが、賑やかでコミカルで、途中で手拍子したくなるかもしれませんね。

大分からもたくさんのダンサーが出演しますが、
どのように演じてほしいですか?

 オーディションに受かったダンサーたちはプロではないけれども、本当にバレエが好きだという気持ちが伝わってきます。それがいちばん大事。今回は複雑な演出でたくさんの要素を覚えてもらわなければいけませんが、それをしっかり吸収して、一人ひとりがそれぞれのキャラクターの人生をいきいきと生きてほしいなあと思います。

4月29日〜5月4日まで行われた集中レッスンの様子。 全編の振付が終わり、キャラクターづくりに細かい指導をする首藤さん

首藤さんは、動き一つひとつの意味を
きちんと捉えさせていましたね。

 何でも、ちょっとした行動に意味があります。普通の生活では、たとえば「コップを手に取る」ことの意味は考えませんよね? でもなぜかと考えたら「喉が乾いたから」「コップが美しかったから」などいろいろな意味があります。創作上ではそれを解釈しなければ、人に見せたときに伝わりません。意味を捉えた動きは、観客の心を豊かにしますし、芸術を通して学んだことは、きっと自分自身の普段の生活をも豊かにしてくれます。今回の舞台では、ドン・キホーテやサンチョ・パンサなど「動き」が重要になる役どころにパントマイム集団CAVAを起用していますので、そんなところにも注目してみてください。バレエ「ドン・キホーテ」には200年もの伝統がありますが、そこに新しいものをうまく融合できたらと思います。

本番がとても楽しみになってきました。
最後に、大分への思い、そして大分の方々へのメッセージをお聞かせください。

 僕は小さい頃から劇場が大好きでよく通っていました。大分には素晴らしい劇場があり、美術館もできてこれまでよりもっと芸術(アート)の薫るまちになりましたね。そんななかで少しでもみなさんがバレエに興味を持っていただけたら嬉しいです。今回の公演は、誰もが楽しんでいただける内容なので、小さなお子さんからご年配の方々まで、たくさんの方に観にきていただけたらと思っています。

Profile

 15歳で東京バレエ団に入団。19歳で「眠れる森の美女」の王子で主役デビュー。「ラ・シルフィード」「ジゼル」「白鳥の湖」など数々の古典作品をはじめ、モーリス・ベジャール振付「春の祭典」「M」「ボレロ」ほか、ジョン・ノイマイヤー、イリ・キリアンなど世界的現代振付家の作品に多数主演。2004年東京バレエ団を退団後、特別団員となる。2010年第42回舞踊批評家協会賞を受賞。2012年第62回芸術選奨文部科学大臣賞を受賞。同年大分合同新聞文化賞受賞。

福岡 雄大 バジル

 「バジルの配役は初めから福岡さんの設定で構想している」と首藤さんから直接オファーをいただき、僕でいいのだろうか?という気持ちもありましたが、素直にとても嬉しく思いました。バジルは、全幕公演のなかでも最も多く踊ってきた役。首藤さんの思い描くバジルは明確なので、そのイメージを汲み取って表現したいです。バジルは二枚目なんですが、どこか三枚目なところもある魅力的な男性です。情熱的に、ときにコミカルにバジルを踊れたらいいなあと思っています。
 僕がバレエを始めたのは7歳のとき。昔から体を動かすのが好きで、マイケル・ジャクソンを見て「ダンスってこんなにかっこいいんや!」って衝撃を受けたのを覚えています。そんな子どもの頃、お稽古場の先生に「素直な気持ちを大切に」と教わってきました。どんなに踊れても、舞台に立つと素がでます。今回はたくさんの若い方も出演されますが、みなさんにも素直な気持ちを大切に、学んで行ってほしいですね。
 大分は食べ物も焼酎も美味しくて、食べ過ぎちゃうので大変です。そんな大分でお届けするドン・キホーテは、感動も笑いもあり、観にきた人はみんな笑顔で帰れる作品になると思います。いろんなキャラクターがいるので、子どもから大人まで楽しめます。公演の途中、面白ければ笑ってください! 僕、大阪出身なので、笑われないと「あれ、いまのウケへんかった!」と思ってしまうので(笑)。

Profile

 7歳からバレエを始める。19歳でチューリッヒに渡り活躍した後、2009/2010シーズンより新国立劇場バレエ団に契約ソリストとして入団。『ドン・キホーテ』『椿姫』『火の鳥』『シンデレラ』などで主役を務め高い評価を得ている。2012年よりプリンシパルに昇格。第44回舞踊批評家協会新人賞受賞。

佐藤 香名 (笠木啓子バレエ研究所)キトリ/ドゥルシネア姫

 オーディションのときはぜんぜん自信がなくって、手応えもなかったので、役が決まって不安しかなかったです。でも、首藤先生や福岡さんに細かいところまでたくさん教えていただいて、ちょっとずつ楽しめるようになりました。福岡さんは、一緒に踊っていて見とれてしまうほど踊りが美しいです。その相手のキトリ役、魅力的な女性を演じられるようがんばりたいと思います。大分でドン・キホーテの全幕が演じられるなんて夢みたい! きっとすばらしい舞台になるので、私自身もとてもたのしみにしています。

森口 真司 (大分県立芸術文化短期大学准教授)指揮

 この大分の地で一流ダンサーである首藤さんが構成・振付・演出を手掛け、大分に住んでいる人が中心となって参加する舞台…大分でこんな面白いことができるのだと思うとワクワクしますね。主役はもちろんバレエ。総勢70名ほどのオーケストラでバレエを盛り上げます。プロの演奏家から学生たちまで…と混成部隊ですが、とても面白いメンバーが集まったと思います。華やかな楽しい音楽でドン・キホーテの世界観を表現したいですね。

神品 英夢 こうじなえむ(佐藤朱音バレエ研究所)街の踊り子

 ドン・キホーテはとても楽しい舞台。首藤先生は一人ひとりの細かな演技までしっかりと熱心に指導してくださっており、練習を重ねるにつれて一体感が生まれてきています。本番は、お客さまに楽しんでもらいたいですね。こういう舞台に立てることをとても嬉しく思っています。

小野 恵莉奈 (ゆりかごバレエスタジオ)キトリの友人

 首藤先生は、踊っている人がいかにきれいに見えるか研究されていて、お稽古中にいろんなところを見ているなあと思います。優しいけどいい厳しさをもって教えてくださいます。本番は、会場が本当にスペインにいるような舞台になるよう、心掛けたいです。

中川 絢加里 (笠木啓子バレエ研究所)キトリの友人

 首藤先生は憧れの存在。ドン・キホーテもとても好きなバレエなので、どんな作品になるのかとても楽しみにしています。レッスンは明るく楽しく、とても勉強になります。お客さまにバレエが好きになってもらえるような踊りができるといいなあと思っています。

ドン・キホーテ
公演名平成27年度 文化庁 劇場・音楽堂等活性化事業
大分県立美術館開館記念 第17回 大分県民芸術文化祭開幕行事
バレエ『ドン・キホーテ』
日時9/22(祝)開場15:15/開演16:00
会場iichikoグランシアタ
出演 [演出・振付]首藤康之
[指揮]森口真司
[出演]おおいた洋舞連盟、福岡雄大、井澤駿、今勇也 ほか
料金[チケット発売中]
GS席10,000円、S席8,000円、A席6,000円、B席4,000円、C席2,000円、
[U25割引]半額(B・C席のみ)

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