Vol.65 2014 SUMMER

歌舞伎のタシナミ。

松竹大歌舞伎。

話題の猿之助、中車の襲名披露公演。
猿之助と中車ががっぷり組んで全国へ

 公演を前に四代目市川猿之助、九代目市川中車が記者会見を行いました。西コースの幕開き『小栗栖の長兵衛』を演じるにあたり、中車は「2年前、新橋演舞場で歌舞伎に初めて出させていただいた作品。少しでも自らの前進を実感できる60分でありたい」と、襲名披露興行に向けた4カ月の積み重ねを披露することを約束。一方の猿之助も『四の切』について、「三代目、四代目猿之助=狐忠信と思っていただいていい」と、襲名披露での上演が役を進化させたことを思わせました。2年にわたる襲名披露興行。舞台と移動を繰り返す全国公演で、前向きな姿勢を見せるお二人の意気込みあふれる舞台をお楽しみください。

四代目 市川猿之助
九代目 市川中車

襲名披露公演に向けて

〜公園前の猿之助さんにインタビュー〜

 四代目市川猿之助と九代目市川中車、澤瀉屋(おもだかや)の新世代を象徴する二人がそろって襲名したのは2012年6月。そこからスタートした襲名披露興行も2年目となり、いよいよ大詰め。9月の大分iichiko総合文化センターでの公演が近づいてきた。

 当代猿之助は、四代目市川段四郎を父に、二代目猿翁(三代目猿之助) を伯父に持つ、澤瀉屋生粋の環境に育ち、早くから次世代を担う花形役者として、市川亀治郎の名前で活躍してきた。その芸域は古典から現代劇まで幅広く、女方も多く勤めている。その一方で、歌舞伎だけでなく映画や大河ドラマなどにも進出し、活躍の場を広げてきたのはご存じのとおり。

 かたや九代目市川中車は、映像の世界では香川照之の名前で活躍する俳優。映画やテレビドラマで数々の賞を受賞し、演技派俳優として確固たる地位を築いてきた。しかし、2011年に突然、歌舞伎の世界に飛び込むことを宣言。大きな話題となったのは記憶に新しい。二代目猿翁(三代目猿之助)は実の父、四代目猿之助とは従兄弟の関係である。

 このお二人が、襲名披露興行として大分公演で演じるのは『義経千本桜 川連法眼館の場』(通称『四の切』)と『小栗栖の長兵衛』。演目の見どころと魅力を猿之助さんに伺った。「見どころというのはお客様によってまったく違いますので、一概に言うのは難しいですが、演目の特徴で言うと、『四の切』はいわば歌舞伎の古典中の古典。一方の『小栗栖の長兵衛』は明治以降につくられた新しい歌舞伎です。今回は新旧歌舞伎の両端をご覧になれるのが魅力でしょうか。歌舞伎の奥深さ、幅広さを味わっていただければと思います」

 猿之助さんが演じる『四の切』の狐忠信は、三代目猿之助が完成させた、澤瀉屋を代表する演目のひとつ。子どもの時に三代目の狐忠信を見て、自分もアレをやりたいと憧れ続けてきたという。その芸を四代目猿之助の名前で演じることへの意気込み、そして芸の継承については、「私としてはとくに気負いのようなものはありません。いただいた素材を現代に生きる自分なりに一生懸命やって良いものになったとき、結果としてそれが芸の継承としてつながっていくのだと思っています」

 襲名から2年、これまでに全国各地で50か所を超える公演を続けてきたが、土地柄や観客の反応の違いを感じることはあるだろうか。

「昔はいざ知らず、メディアの発達した現代では地方による違いはあまり感じません。演じる私たちはどこに行っても同じ気持ちで精いっぱいやるだけなのです。ただ、お客様にいただく応援や熱気によって、役者の気持ちは変わります。芝居そのものの完成度といいますか、温度のようなものが変わってくるのも当然で、私たちもそうした出会いを楽しみにしております」

 何はともあれ、「歌舞伎の舞台をぜひ生で体験していただきたい」という。「今までご覧になったことのない方も、この機会に足をお運びいただき、歌舞伎の醍醐味、面白さを堪能して下さることを願っております」

 大分県で演じるのは初めてという猿之助さん。忙しいスケジュールの合間にはぜひ、旅の思い出も作っていただきたい。大分にはおいしい食べ物やお酒もたくさんありますよ!

公演名松竹大歌舞伎 iichiko presents 大分公演
日時9月20日(土)昼夜2回公演
時間昼の部13:00 夜の部17:30 (共に開場30分前)
会場iichiko 総合文化センター iichiko グランシアタ
演目一、小栗栖の長兵衛
二、襲名披露口上
三、義経千本桜 川連法眼館の場

※ 夜の部は、「義経千本桜 川連法眼館の場」「口上」「小栗栖の長兵衛」の順となります。
出演中村梅玉、市川猿之助、市川中車
料金GS席10,000円 S席7,000円 A席5,000円 B席3,000円
U25券 S〜B各席種の半額
チケット取扱
iichiko 総合文化センター 1F インフォメーションTEL 097-533-4006
OBS 事業部TEL 097-553-2509
トキハ会館3F プレイガイド、別府ヱトウ南海堂
ローソンチケット各スポット ローソン店頭(Lコード:85986)
チケットぴあ各スポット セブン・イレブン店頭(Pコード:436-858)
ご注意 ・未就学児の入場はご遠慮ください
・無料託児サービス有
(要予約9月12日(金)17時締切。満1歳から未就学児まで。定員10名)
・車椅子席のお問い合わせ・ご予約は主催まで。
・U25チケット(25歳以下対象)はiichiko総合文化センターのみ取り扱い。
・開催当日 幕見席(1,000円)販売します。
主催・お問合わせ(公財)大分県芸術文化スポーツ振興財団 TEL 097-533-4004

 裃(かみしも)姿の役者たちが舞台に居並び、お客様にご挨拶の言葉を述べるのが「口上」。中でも襲名披露興行で行われる口上はたいへん華やかで格式の高いもの。襲名する役者を中心に、支える一門や先輩役者たちがずらりと並びかしこまって、お客様に今後のお引き立てを願うことが多い。そして襲名する役者はお客様、関係筋への御礼と芸に対する覚悟を本人の言葉で語る。リズミカルな口調は耳に心地よく、晴れがましさと親しみと、緊張感の交錯する独特の雰囲気があり、期せずして役者の素の表情が垣間見えることもある。観客にとっては芝居に勝るとも劣らない襲名披露興行ならではの楽しみな一幕である。今回は四代目市川猿之助と九代目市川中車の同時襲名披露。その華やかさも格別なものに違いない。

市川猿之助 四代目 澤瀉屋

 いちかわ・えんのすけ/市川段四郎の長男。58 年歌舞伎座『御目見得太功記』の禿(かむろ)たよりで二代目市川亀治郎を名のり初舞台。平成24 年6・7月新橋演舞場『義経千本桜―川連法眼館の場』の忠信実は源九郎狐、『ヤマトタケル』のヤマトタケルなどで四代目市川猿之助を襲名。

市川中車 九代目 澤瀉屋

 いちかわ・ちゅうしゃ/市川猿翁の長男。平成24 年6・7 月新橋演舞場『小栗栖の長兵衛』の百姓長兵衛、『ヤマトタケル』の帝、『将軍江戸を去る』の山岡鉄太郎で九代目市川中車を襲名し初舞台。

中村梅玉 四代目 高砂屋

 なかむら・ばいぎょく/六代目中村歌右衛門の養子となり、31年1月歌舞伎座『蜘蛛の拍子舞』の福才で二代目加賀屋福之助を名のり初舞台。42 年4・5月歌舞伎座『絵本太功記』の十次郎と『吉野川』の久我之助ほかで八代目中村福助を襲名。平成4 年4月歌舞伎座『金閣寺』の此下東吉と『伊勢音頭』の福岡貢で四代目中村梅玉を襲名。

【小栗栖村の長兵衛】

●あらすじ
 小栗栖村の長兵衛は、博打や酒、喧嘩に明け暮れて、村人には嫌われ、父親にまで見放される乱暴者。今日も馬を盗んだ疑いをかけられ、怒って暴れ廻ったため、村人たちに簀巻きにされてしまいます。しかし、村に現れた秀吉の家臣堀尾茂助の尋ねによって、長兵衛が謀反の大将明智光秀を竹槍で討った手柄者だと分かると、皆の態度は一変。長兵衛を村の英雄だと褒め称えます。長兵衛は英雄の証である竹槍を手に、秀吉の陣のある京へと向かうのでした。

●見どころ
山崎の合戦の後、明智光秀が農夫に襲われ命を落とした史実を背景として、岡本綺堂が浅薄な人間の姿や大衆心理に風刺を込めて描いた新歌舞伎の名作です。大正九年に初代市川猿翁(当時猿之助)が初演して以来の澤瀉屋の芸に、中車が挑みます。

【口上】

 古典から新作まで幅広い活躍を見せた初代市川猿翁と三代目市川段四郎。その五十回忌を機に、二代目猿翁、四代目猿之助、九代目中車、そして五代目團子が誕生致します。偉大な先人を偲び、また澤瀉屋の新たな門出となるご挨拶を申し上げます。

【小栗栖村の長兵衛】

●あらすじ
 川連法眼に匿われている源義経のもとへやってきた佐藤忠信に、義経が伏見で託した静御前のことを訊ねますが、忠信は覚えがない様子。義経が不審に思うところ、静御前と忠信の参上が告げられます。ひとり現れた静御前は、自分の供をしていた忠信と、目の前の忠信の様子が違うと言い、義経は静御前にもうひとりの忠信の詮議を命じます。

●見どころ
 「川連法眼館の場」は、義太夫狂言の三大名作のひとつ『義経千本桜』の四段目の切にあたることから、通称「四の切」と呼ばれています。初音の鼓を慕う仔狐の姿に、人間の親子の情愛を重ねて描き出した名場面を、猿之助が澤瀉屋型ならではの数々の仕掛けや早替りなど趣向あふれる演出でご覧いただけます。

講習前の予習にオススメ。『歌舞伎レクチャー』開催!

 松竹大歌舞伎の本公演を前に、もっと詳しく歌舞伎の楽しみ方について知りたいという方のために、今回も「歌舞伎レクチャー」を開催します。講師は古典芸能解説者としておなじみの葛西聖司さん。NHKの名アナウンサーとして数々の邦楽や伝統芸能の番組に携わり、お茶の間の皆さんから親しまれてきた葛西さんのレクチャーは、涙と笑いのエピソードを織りまぜた内容です。どうぞお楽しみに。

公演名歌舞伎レクチャー
日時8月30日(土)
時間①11;00〜12:30 ②14:00〜15:30 ※同一内容です
会場iichiko 総合文化センター B1F iichiko Space Be 映像小ホール
参加費iichiko 総合文化センター B1F iichiko Space Be 映像小ホール
主催大分県芸術文化ゾーン創造プロジェクト実行委員会
問合せ(公財)大分県芸術文化スポーツ振興財団 TEL 097-533-4004

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