Vol.65 2014 SUMMER

中山館長のSketch diary(スケッチダイアリー)

待ち遠しいOPAMオープニング展
1st Sketch

 iichiko 総合文化センターと昭和通りを挟んで、「竹篭」こと大分県立美術館の建物の全容が現れ始めた。来年春の開館めざし、着々と進む工事と並行して、オープニング展への準備もその構想が明らかにされつつある。まさに、新見隆館長の世界的なネットワークを駆使して選んだ作品群は、キュレーターとしても活躍される氏の面目躍如だ。

 4月24日に開かれた「OPAMフェスタ」で新見館長はオープニング展の一端を話された。翌朝の大分合同新聞に、「マティス、モンドリアン……一堂に」と題して紹介されている。それによれば、大分が誇る田能村竹田や福田平八郎、高山辰雄らの作品に対比させながら、名画二百選の形で紹介されるという。

 例をあげると、英国を代表する風景画家・ターナーの絵は霧や雲間にぼんやりと見える古城や船などでよく知られるが、日本人にも人気がある理由は、空気や水を描いているからではないか。洋画は実体をどう表現するかに大きな重点があり、空気や水といった実体の見えないもの自体を描くのはむしろ極めて少数派である。しかし、日本では空気や水を描いた画家は多い。版画でも広重の東海道五十三次「庄野」に、嵐の中、蓑傘をかぶって風に向かって峠道を上る旅人が描かれていたり、北斎の富嶽三十六景には、懐紙が風に飛ばされて宙に舞うシーン(「駿州江尻(すんしゅうえじり)」)や「神奈川沖浪裏(おきなみうら)」のように、波を芸術にしてしまった例がある。福田の「鯉」の絵は、水そのものは描いていないのに悠然と水中を泳ぐ姿を活写している。

チェコ・南ボヘミア州のチェスキー・クルムロフで( 2012.8)

 ヨーロッパからやって来る絵には、その他にも幾何学模様のモンドリアン、マティスの「赤いキュロットのオダリスク」がある。一見素人が描いたようにも見えるが、見れば見るほど画面に没入しそうな不思議な魅力をたたえるアンリ・ルッソー、恋人や家族をエロティックとさえ見える手法で、それでいて人間の本質を鋭く描き出したエゴン・シーレ、同じ時代の同じウィーンで日本の文化に影響を受けながら独自の世界を描き出したクリムトなど、それぞれの時代と場所は異なるが、世界を代表する画家たちの絵と日本を代表する画家との出会いが演出される。

 筆者は音楽堂(iichiko 総合文化センター)の館長をしているが、かつては「画家になりたい」とあがいていた時代もあった。実業界の仕事で海外に出張する度に、仕事の合間を縫っては各地の美術館を見て歩いたし、日本国内でも随分多くの美術館や展覧会を訪れてきた。しかし、今回の新見館長のアイデアは、大分でそれらの絵が見られるという破天荒の試みである。しかも我が国の傑作と比較する事が可能となるという、ワクワクするような企画だ。ここに掲げてある絵のほかにも、どのようなラインナップになるのか。

 いずれオープニング展の詳細が発表されようが、『emo』読者の皆さんも想像を膨らませてみたら如何だろうか。

iichiko 総合文化センター館長
中山 欽吾

Kingo Nakayama/大分上野丘高校から九州大学卒業後、三井金属鉱業(株)に入社。三井金属(米国)(株)社長を経て、バリトン歌手で養父でもある中山悌一氏の強い要請で、「二期会」に転身。(公財)東京二期会常務理事、大分県立芸術文化短期大学理事長兼学長、(公財)大分県芸術文化スポーツ振興財団理事。平成25年4月から現職。大分市出身。

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