Vol.64 2014 SPRING

[室内楽]

小林道夫+ウェールズ弦楽四重奏団 日本鍵盤界の名手と
若き新星クァルテットの共演

小林道夫 Interview
会話が弾むような楽しさが
室内楽の魅力です

 平均年齢がまだ20代半ばの若き音楽家、ウェールズ弦楽四重奏団と、ウェールズ弦楽四重奏団よりもはるか半世紀のキャリアを持つ重鎮、小林道夫先生に本公演の聴きどころを伺いました。

−81歳になられて、まだまだ現役でおられる秘訣は何でしょう?

好きなことをやっているからでしょうね。それから、この年になってくると音楽的なまとめ役に徹することが多くなり、号令をかけている方だと疲れないんです。号令をかけられているとすぐ疲れちゃうんだけど(笑)。長いキャリアがあるので、若い人たちにアドバイスが出しやすいし、それが年長者の責任だとも思っています。

−若い演奏家に教える際、どういうところが楽しいですか?

 今の若者たちは、我々の頃を考えると嘘のように、楽器を操る技術がとても優秀なんです。ただ、楽譜に書かれてあることを音にすると素晴らしいのですが、楽譜に書かれてないことがいっぱいありますから、それをちょっとずつアドバイスしていくと、どんどん音楽が生き生きしてくるという体験をすることが多い。それが楽しいです。我々のような立場が一生懸命種をまいておけば、どこかで必ず芽が出るでしょう。そして若い人たちは、自分の好き嫌いとは別に、いろんなことをやって、そして自分の力よりはるか上の人たちと触れ合い影響をもらうことに挑戦してほしいと思います。何が自分に本当に向いているかは、自分では分かりにくいものですから。

−ウェールズ弦楽四重奏団も、先生よりずいぶん若い演奏家ですね!

彼らとの共演を、非常に楽しみにしています。私からは、モーツァルトをやりたいと提案しています。モーツァルトの音楽のエッセンスを本当に楽しめるのは、オペラなんだそうです。そしてオペラを観るような楽しさにあふれているのが、実はピアノ協奏曲なんですね。そして27あるうちの3曲だけ、モーツァルト自身が、弦楽四重奏とやってもいいと言った曲があるんです。そういうのをやりたいと思っています。モーツァルトとは長い付き合いですが、いまだに驚かされることも多い。大作曲家の作品には飽きることがないっていうか…飽きるなんて言っちゃいけませんね(笑)…そもそも楽譜はとてもいい加減なもので、今の作曲家には「これどういうつもり?」って聞くことができますが、モーツァルトには聞けませんからねえ(笑)。いつか天国で会えたら、聞いてみたいことがたくさんあります。

−先生が考える“室内楽の魅力”とは、何でしょう? そして、今回の公演の聴きどころを教えてください。

皆さん、室内楽はオーケストラに比べて地味な印象をお持ちでしょう。でも、耳を傾けていただくととても吸い込まれる種類の音楽です。それぞれの楽器がうまく噛みあって、内輪で会話が弾んでいるような楽しさに気づくと思います。さらに、モーツァルトの音楽は理屈っぽくなくて本質的に楽しい音楽です。人間が人生で出会ういろんなことに対して、薬のような役割を果たしてくれます。そんな力のある音楽会になるでしょうから、ぜひ聴きにいらしてくださるとうれしく思います。


ウェールズ弦楽四重奏団 Interview
アンサンブルによって
いろんな「色」を表現したい

−クァルテットならではの面白さ、魅力は何でしょうか?

横溝 少人数なのでリズムやタイミングなど、オーケストラに比べて自由が利く点です。また、ダイナミックな演奏を求められるオーケストラに対し、4人で演奏するクァルテットは、音などの演奏のバランスを最も重視します。僕はクァルテットこそが音楽の黄金比率を成した、最高の編成だと感じています。

﨑谷 他の演奏者と組む場合、必ず音程やタイミングを合わせる作業が必要になります。しかし僕らは学生時代からの付き合いということで息も合いますし、そういった作業もある程度クリアした状態から進むことができますから、とても落ち着いて演奏ができます。長く続けているからこそですね。

−今回共演する小林道夫さんの演奏には、どのような印象をお持ちですか?

三原 純粋さでしょうか。僕らはまだ小林さんにお会いしたことはありませんが、小林さんは世界で活躍する演奏者の方々と共演されていて、そういった方々の影響を受けていらっしゃると思います。僕らも演奏を通じて、小林さんが受けてきたものを少しでも吸収したいと考えています。

富岡 今回のように、1つ楽器が加わった形の演奏はよく行いますが、実は同じ弦楽器が加わるよりも、鍵盤や管楽器など全く違う楽器が入った方がなじみやすかったりします。同じ弦楽器だと、その人のスタイルに合わせてバランスを取らなくてはならず、かえって手間がかかるのです。でも、鍵盤などでは調整も柔軟に行え、むしろいい影響を受けて、相乗効果も出ると感じています。

−大分の皆様に向けて、今回のプログラムの聴きどころを教えて下さい。

﨑谷 僕が担当するモーツァルトのヴァイオリンソナタですが、ピアノの右手パートがクァルテットでいう1stヴァイオリンのパートを、ヴァイオリンは下のパートを弾く……といった音の変化が多くあります。そのあたりの音の取り方など聞いていただけたらと思います。

富岡 室内音楽は音程のコントロール次第で演奏の「色」が変わっていきます。特に僕らは長年クァルテットを続けていることもあり、アンサンブルによっていろんな「色」を表現できますので、曲ごとにそれを感じてくれたら嬉しいです。

三原 小林さんとの共演は、きっと僕らが4人でクァルテットとして弾いている時と、キャラクターが違うと思います。演奏者が同じでも、組み合わせが変わるとアプローチの仕方も変わりますので。今回のコンサートは、その変化を楽しんでいただけると思います。

−皆さんは大分にいらしたことがあるそうですが、その時の思い出などは?

﨑谷 一昨年、大分名産の関サバをいただきました。美味しかったですね。

横溝 ジャングル公園の先にある、小料理屋さんの地鶏鍋をいつも食べに行きます! ご当地ものは美味しいし、何より安くていいですね。

三原 僕は母親が福岡出身で、幼い頃に旅行で湯布院の温泉に行きました。

﨑谷 ふだんは4人でお酒も飲むこともありますし、今回は一泊できるので、ぜひ温泉にも行きたいですね。

PROFILE
小林 道夫 こばやし みちお

1933年生まれ。チェンバロ、ピアノ、室内楽、指揮など活動が多方面にわたる第一人者。特にバッハ演奏では最高の評価を得ており、毎年年末には「ゴルトベルク変奏曲」のリサイタルを開催している。室内楽プログラムも多彩で、長年のキャリアに裏付けられた深い解釈は日本のみならず、世界各地で高く評価されている。現在、大分県立芸術文化短期大学客員教授。

ウェールズ弦楽四重奏団

難関のミュンヘン国際音楽コンクールにて第3位となり、日本人クァルテットとして38年ぶりの入賞を果たす。﨑谷直人(1stヴァイオリン)・三原久遠(2ndヴァイオリン)・横溝耕一(ヴィオラ)、富岡廉太郎(チェロ)で構成され、’10年よりヨーロッパを中心に活動後、'13年には日本を拠点に数多くの公演を行う。’10年京都青山音楽賞、’11年バーゼル・オーケストラ協会コンクールにて"エクゼコー"賞を受賞など、卓越した実力を見せる。


公演名iichiko presents 小林道夫+ウェールズ弦楽四重奏団
日時2014年7月7日(月)18:30 開場/19:00 開演/21:00 終演予定
会場iichiko 音の泉ホール
出演小林道夫、ウェールズ弦楽四重奏団
曲目 ディヴェルティメント ヘ長調 K.138(ウェールズ弦楽四重奏団)
ヴァイオリンソナタ第28番 ホ短調 K.304(小林+﨑谷)
ピアノ四重奏曲第1番 ト短調 K.478(小林+三原+横溝+富岡)
弦楽四重奏曲第19番 ハ長調「不協和音」K.465(ウェールズ弦楽四重奏団)
ピアノ協奏曲第12番 イ長調 K.414 ≪ピアノ五重奏版≫
(小林+ウェールズ弦楽四重奏団)
料金 S席4,000円、A席3,000円、B席2,000円
※U25割引(A・B各席の半額、25歳以下対象、枚数限定)
お問合わせ(公財)大分県芸術文化スポーツ振興財団 TEL 097-533-4004

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