Vol.64 2014 SPRING

iichiko グランシアタ ジュニアオーケストラ

5年間の経験を糧に

 ジュニアオーケストラは、2009年に結成され、2010年に下野竜也先生の指揮でデビュー。その後これまで、年1回の定期演奏会をメインに、夏の弦楽アンサンブルコンサートや病院・施設へ赴く出張ミニコンサートなど、さまざまな場に演奏を届けてきた。特に、3月1日には、NHK交響楽団のメンバーとの特別演奏会があり、憧れの演奏家たちと同じステージで音楽を奏でるという、夢の舞台も実現したばかりだ。

会場を感動に包んだ名演

 第5回定期演奏会の曲目は、モーツァルトの歌劇「フィガロの結婚」序曲、同じくモーツァルトのヴァイオリン協奏曲第5番、そしてベルリオーズの「幻想交響曲」。この3曲を通じて、今回は見どころが3つあった。
 一つ目は、下野竜也先生との再演である。4年ぶりに再会した下野先生と子どもたちが、どんな化学反応を起こすのか? 結果、子どもの能力を引き出す下野先生の力と、子どもたちの秘めた力に驚かされた。数日前まではできなかったことが、本番ではあふれるような美しい旋律となって表れたのである。
 二つ目は、川瀬麻由美先生と、ヴァイオリンコンチェルトでの共演。ふだんの練習では“先生”でありながら、今回は“演奏家”としての一面を垣間見ることとなったのである。颯爽と現れた川瀬先生は、少し緊張の面持ち…子どもたちは一緒に演奏しながら、川瀬先生のソロになるとうっとりと聴き入っていた。
 演奏が終わると、あの愛情たっぷりの川瀬先生の笑顔が戻り、会場が温かい雰囲気に包まれた。
 三つ目が、ベルリオーズの難曲「幻想交響曲」をどう聴かせるのか?ということ。作曲家の狂おしいほどの恋を曲にした1時間にも及ぶ大作だ。子どもたちは、それに期待以上の演奏で応えてくれた。指揮が盛りあがると音も膨らみ、膨らんだ音がホール全体を埋め尽くし、まさに感動の渦を巻き起こしたのである。
 「前の年よりもいい演奏を」。子どもたちは常にそう思いながら練習にとりくみ、確実に成長してきた。第1回目とまったく同じ子どもたちが演奏しているわけではなく、毎年、少しずつメンバーは入れ替わりながらも、歴史は引き継がれている。「子どもの可能性は無限大だ」。あらためて実感させられた、定期演奏会だった。



A直前練習の風景。最後まで細かい指導が行われた
B本番直前の男子チーム。
開演前というのに余裕の様子?! 卒団したメンバーとも久しぶりの再会
C開演30分前、クラリネットメンバーによるアンサンブル、ロビーコンサート
Dヴィオラ、チェロ、コントラバスパート
E打楽器も迫力たっぷり!
F川瀬麻由美先生とのヴァイオリンコンチェルトの一場面。素晴らしい演奏でした
G小学生と大学生が隣同士で演奏する姿も、ジュニアオケならでは。こうして伝統が受け継がれていきます
H聴かせどころがたくさんあった管楽器パート
I幻想交響曲のフィナーレ、指揮がヒートアップ。演奏にも熱が入って…
J終了後は懇親会。お疲れさまでした! 素晴らしい演奏をありがとう!
指揮者:下野 竜也 先生

第1回目の演奏会で指揮をさせていただいたときも素晴らしい演奏会でしたが、今日はさらに素晴らしかった。ふだん、指揮をしながらこんなに感動することは少ないけれど、今日は言葉にならない感動を覚えながら指揮をしていました。うれしかったのは、子どもたちが指揮を見ていたというより、いろんな人とコミュニケーションをとりながら演奏していたこと。それこそ、オーケストラのいちばん大切なことです。「やるじゃん!」と思いました。本当に、みんなのことを誇りに思っています。

団長:中山 欽吾 館長

途中、ずっと目をつむって聴いていましたが、ジュニアオーケストラとは到底思えない演奏でした。本当に涙が出てきました。日頃、先生たちが一生懸命指導してくださいましたが、やっぱり最後には、マエストロの音楽にあわせないといけない。そういう意味で、下野先生の力は素晴らしいと思います。厳しい中にも、子どもたちに素晴らしい音楽性を植えつけてくれました。

音楽監督:川瀬 麻由美 先生

自分自身のソロが最後までたどりつけたのは、本当に子どもたちみんなと、下野先生のおかげです。ステージの上にいなかった子たちも、バックヤードで応援してくれていました。会場には、初めて来たという方の声もたくさん耳にしました。その方々が来年もまた来たいと言ってくださっているのを聞いて、この輪がますます広がっていくといいなと思いました。本当にいい演奏会だったと思います。

音楽主幹:内田 博 先生

1年前、この曲を決めるとき、実は大反対したんです。でも、子どもたちの力があれば、1年間でなんとかなると信じました。本当に今日は、5年間の集大成となる素晴らしい演奏会でした。これは大きな誇りにしてください。明日からまた新しいページがつくられていくでしょう。観客の心の中にも、大分にこんなすばらしいオーケストラがあるんだと刻まれたと思います。


最初はジュニアオーケストラの演奏、
モーツァルトの「ディヴェルティメント K.137」

つづいて、マロ先生率いるN響を中心としたメンバーによるメンデルスゾーン「交響曲第4番 イ長調『イタリア』Op.90」

最後はN響のメンバーとジュニアオーケストラが合同演奏。曲はビゼーの「カルメン」。指揮は小野富士先生

隣でN響メンバーが演奏していることで緊張と興奮気味の子どもたち

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