Vol.58 2012 AUTUMN

伝統芸能いろはガルタ もう食わず嫌いとは言わせない!

第2回 人間国宝 ― living national treasure ―

 重要無形文化財保持者=人間国宝の技と魅力に迫る、「人間国宝シリーズ」の6回目。
今年は、尺八奏者の山本邦山氏が来県します。
公演に先立ち、大分のファンのために!ご自宅でインタビューに応じていただきました。

あくまでも、一人の音楽家でいたい

INTERVIEW 尺八奏者 山本 邦山(やまもと・ほうざん)

日本の伝統楽器として現代に生き続けている尺八。その奥深い音色は世界でも「バンブー・フルート」として、人気を集めています。今回、第6回を迎える「人間国宝〜その心と技〜」では、尺八奏者の山本邦山さんの演奏と対談を通して人間国宝の魅力に迫ります。

山本 邦山

* 尺八を始めたきっかけから教えてください。

 祖母が箏(こと)の生田流正派の大師範、父が尺八の師範という邦楽の家に育ったので、幼い頃、尺八はおもちゃ代わりでした。父は私が6歳の時に亡くなりましたが、父が大切にしていた尺八がいつもそばにありました。長い年月を経てすっかり黒ずんでしまいましたが、今でも演奏会には必ず持っていくようにしています。

 本格的に尺八を学びはじめたのは9歳になってからです。中学一年生で父の友人の中山蝶山先生に入門し、高校一年生のときに准師範試験に合格して人に教えられる資格を得ましたが、プロになろうとまでは考えていませんでした。大学卒業後には貿易会社への就職も決まっていましたから。そこへ思いがけず、パリでの音楽祭に日本代表として参加する機会に恵まれたんです。海外で演奏を評価していただいたことで、尺八の道に生きる決意をしました。

 尺八奏者としての転機は、1967年に行われたアメリカのニューポート・世界ジャズ・フェスティバルへの参加です。当時、尺八でポピュラー音楽を演奏することは珍しく、私にとっても新たな挑戦でした。アメリカの新聞でも大きく報道され、そこから共演の輪が広がり、様々なジャンルの演奏家との共演を経験させて頂きました。尺八という楽器の可能性もかなり広がったと思います。

山本 邦山

 ただ、伝統を重んじる邦楽界では異端者のように扱われ、悩んだこともありました。それでも音楽に境界はないと信じて挑戦し続けたからこその出会いや経験がありますので、尺八を続けていて本当によかったと思っています。尺八を始めてから今年で65周年になりますが、私をこの道に導いてくれた家族や師匠、多くの演奏家の方々には心から感謝しています。

山本 邦山

* 尺八は、どんな魅力がある楽器ですか?

 単純な作りだからこそ、人間の心の機微に寄り添うような音が出せるところですね。音程が不安定な楽器なので、吹き方で音の印象はずいぶん変わります。自分の耳で音色を確かめ、指先で音の響きを感じ取りながら吹いていますので、まるで自分の心の声を反映しているような気がしますね。ですから同じ指使いでも全く音色が違ってくるんですよ。

 海外では、特別な仕掛けがあるのではないかと、尺八の中を覗いて不思議がる方もいます(笑)。実際は、竹を切ったものに五孔、つまり正面に四つ、裏面に一つの穴が開いているだけの、非常にシンプルな楽器です。技術次第でさまざまな音を表現できることが、邦楽器ならではの素晴らしさだと思います。

山本 邦山

* 人間国宝をテーマにしたシリーズは、今回で6回目となりますが、観客の方にはどのように聞いてもらいたいですか?

 私は「人間国宝」という肩書きに、いまだに慣れません。言われるたびに、どきっとしてしまいます(笑)。少しキザな言い方になりますが、観客の皆様には「人間国宝」という先入観を抱かずに、あくまで尺八を愛する一人の音楽家として受け入れてほしいと思いますね。

 九州では初めてとなる、私の家族とのステージも予定しています。子どもたちは私と同じように、幼い頃から邦楽器に親しんでいたからか、いつの間にか皆、尺八や箏(こと)の邦楽家になっていました。大分では数年ぶりの演奏会になりますが、昔と変わらない演奏を楽しんで頂きたいと思っています。

 大分には尺八に造詣の深い方が多いので、どんなステージになるか、とても楽しみにしています。ベースとの共演もありますし、ぜひ尺八の新たな世界を堪能して頂きたいです。


山本 邦山 PROFILE
山本 邦山(やまもと・ほうざん)

1937年、滋賀県生まれ。幼少より父から尺八の手ほどきを受け、11歳から中西蝶山に師事。20歳で師範試験登第、都山流尺八の竹号「山本邦山」を名のる。尺八演奏家、作曲家として邦楽界で活躍するのみならず、62年、トニー・スコットと共演した「Music for zen meditation」が話題となり、以降、ヘレン・メリルや原信夫らジャズミュージシャンとも積極的に共演する。02年重要無形文化財保持者(人間国宝)に認定。

公演概要

人間国宝〜その心と技〜 第六回 山本 邦山

[日 時] 2012年11月3日(土・祝)13:30開場/14:00開演
[会 場] iichiko 音の泉ホール
[出 演] 山本邦山(尺八・人間国宝)、葛西聖司(アナウンサー・古典芸能解説者)
坂井紅介(ベース) 、藤舎呂悦(小鼓)ほか
[演 目] 第一部 尺八独奏曲"静寂II" (山本邦山作曲) 、三曲第二番
    (唯是震一作曲) 、雷の落ちない村 (平井康三郎作曲)
第二部 対談
第三部 尺八・小鼓・ベースによるコラボレーション三昧
[料 金] 全席指定4,000円、U25チケット2,000円

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