Vol.51 2011 WINTER

2001年、ロンドンで賞賛を浴び波紋を呼んだニール・ラビュートの問題作を、三浦大輔が演出。さえない大学生アダムが、イブリンという女性に出会い、愛ゆえに彼女の言いなりになって行く。しかしイブリンにはあるとんでもない目的があった…という男女の異質な恋愛劇だ。演劇界が注目するこの舞台で主演を踏むのは、今もっとも勢いのある俳優、向井理。彼に、どんな作品になりそうか、語っていただきました。
 
― 初舞台とても楽しみにしています。向井さん自身は、演劇は好きですか?
 舞台作品は時間があれば何かしら観に行っていますね。

― 憧れの俳優さんはいますか?
 作品や俳優さんの印象は、その作品によって、特に演出家さんによってテイストが全部違ってくるので、この作品やこの俳優さんが一番というのはないですね。ただ、以前一緒に仕事をさせていただいた方が出演されることもあって、蓬莱竜太さん主宰のモダンスイマーズは、公演があると、時間が許せば観に行くようにしています。

― TVや映画とは違う”演劇の魅力“といえば何でしょう?
 お客さんを目の前にしてのライブなので、そこが一番の魅力かなと思います。これまでにも朗読劇やシットコムといった演劇的な要素のある作品に出たことはありますが、ストレートプレイで2時間くらい芝居をするのは初めて。観客が目の前にいて、そこからの反応も毎日違うわけじゃないですか。そうするとこちらの演技も変わってくるでしょうし。それは演劇ならではの魅力であり、楽しみな部分でもあります。

― 共演者の方々の印象は?
 共演陣とは、それほどお話ができていないんです。でもこの先、稽古だけでも1カ月、地方公演を含めれば2カ月になりますから、一緒にいる時間も多くなります。それだけに共演者の方々に慣れすぎてはいけないなというか…劇中で初めて出会う時の新鮮味や、そこから変化していく感じがなくならないよう、気をつけないといけないな、と。同じ作品を何十回も上演するので、いつも新鮮な気持ちで演じられるようにしたいです。

― 三浦大輔さんの印象は。
 すごくシャイな方だなと思いました。だけど芝居に対して自分の信念がある人だと感じます。「厳しい」とか「怖い」という話を聞いていますが、三浦さんは周りで自分がそう言われているのを一番理解している人なんじゃないですか? 僕は厳しかったりするのは全然気にしないんですけど…ただ、「まだそういう部分は隠してるな」という感じはしました(笑)。

― 今回演じるのは”アダム“というさえない男の子ですね。
彼が、出会った女の子によって変わっていくという…。
 アダムについては普通というか、どこにでもいそうな…実際にはいないんですけど(笑)。一般的な特に目立つ人ではない印象ですね。そういう人が豹変していく様が面白いのかもしれないですし、だから演じる際には、観ている人になるべく共感してもらえるような、普遍的な人間になれたらいいかなと。役柄を踏まえつつ、あまり目立たずこのままで。普通の青年がだんだん変わっていく過程で、自分の思惑とは違う方向へズレることへの葛藤があったりもするんですね。そういうことが伝わるように、本当にそのとき思ったことや感じたことが、言葉や顔に出るようにしたいと思います。そういう意味では、本当につくり込む必要はないのかもしれません。毎日変わるであろう劇場の雰囲気に合わせて、ブレて行ってもいいと思うんですね。アダム自身、周りに振り回されるタイプのキャラクターですし。逆にそれくらいフレキシブルじゃないといけないのかな、とも思っています。

― 向井さんはどんな学生でしたか?!
アダムと僕は全然違いますね。僕は彼のように人の言うことに流されたりしないです。今は大分落ち着きましたけど、学生時代から、自分の考えにこだわるタイプというか。今もそれは変わってないですが、当時の物事へのこだわりは、誰よりも強かったんじゃないかと思います。

― ”イブリン“はどんな女の子?
 すごく気の強い人ですよね。そして怖いくらいに妄信的な人というか。盲目的に何かを信じている人なので、そこはある意味、すごく純粋なのだろうと思います。それが行き過ぎると劇中のようなことになってしまうんでしょうけど。

― 衝撃の結末…気になります。ちなみに、向井さんの恋愛観は?!
 これもアダムとはまったく違いますね(笑)。僕は彼のような、相手に流されるような恋愛はしない。まあ頑固ですからね、僕は(笑)。例えば仕事と恋愛とか、次元が異なることを天秤にかけることもありませんし、恋愛のために何かを犠牲にもしない。恋愛は、何かを比べてどちらが大事か順位をつけるものではない、別物ですね。

― 今回の作品は、ロンドンで話題となった問題作です。
初舞台にしてハードルが高そう…?
 初舞台がこうした作品であることに対して僕自身は、「問題作だから難しい」という風には考えてはいません。そもそも、映画でもドラマでも芝居でも、やる前は毎回不安になります。でも「ちゃんとできるか?」という部分で不安になることはあっても、「舞台だから、問題作だから」という理由で、過剰に不安になることはないです。むしろそこは楽しみな部分です。

― そんな作品への意気込みをどうぞ。
 初舞台であることを特に意識する部分はないんですが、この作品が観客に対して、明確な答えを用意するのではなくて「これを観て、どうですか?」と問いかけるようなものにしたいとは思っています。これは僕たちが答えを用意する作品ではないと思ったし、答えを用意しないほうが、お客さんも作品を観る甲斐があるんじゃないかと僕は思うので。この作品を観て「じゃあ、自分だったらどうなんだろう」と考えるきっかけになったほうが、そこに新しく、観てくださった方の考えや感覚が入って、それぞれの中で作品として発展すると思いますし。それはもしかしたら、その人を変えてしまうのかもしれませんけど。そういう作品にできればいいと思います。

― 映画初主演に大河ドラマへの出演、そして今回の初舞台など”
今最も勢いがある俳優“と言われていますが、今後、挑戦してみたいことは?
 多すぎて選べないくらいですね。経験のないことをやりたいですし、お話をいただけるのはとても光栄なことなので、できる限りのことをやってみたい。特に、全く演じたことのない役はすべてやってみたいと思っています。いつまでこの仕事を続けられるかわかりませんが、今は新しい引き出しを増やしていかないといけない、自分の中に経験を積み重ねていく時期だと思うので。共演したことのない方やお仕事をしたことのない監督もたくさんいらっしゃいますし。もちろん、以前ご一緒した共演者や監督と別の機会で仕事をすると、それはそれで前とは違った感覚でできたりするんですけど、新しい人とどんどん出会いを積み重ねていくと、同じ方々と再びご一緒する時にも、もっと違った感覚でできるように思います。

― 忙しくて「疲れた〜」という時もありますよね。そんな時のストレス発散方法は?
 お酒を飲むのが好きで、幸いそういう友達が多くて。だから、友達とお酒を飲んでストレスを発散しています。

― 大分のイメージは? 来県する時に楽しみにしていること、食べたいものはありますか?
 焼酎とゆずごしょうですね。僕は料理もしますし、食べることが好きなんですが、ゆずごしょうが好きで、いつも大分のものを使っています。だから大分というと、お酒と料理という印象が強いです。

― 最後に、大分の方々にメッセージをお願いします!
 とにかくまず、この作品を純粋に観てもらえるとうれしいですね。僕個人や誰か個人ということではなくて、『ザ・シェイプ・オブ・シングス』全体をひとつの作品として観てほしい。演出家の三浦さんもすごく才能のある方ですし、チーム全体の作品としての舞台、そこが僕は見どころになると思います。ですので純粋に、僕たちがどういう芝居をするかを観ていただければ。もちろん、作品を観る理由はお客さんによって様々だと思いますが、いろんな方に作品全体を観て何かを感じてもらえるよう、これからの稽古でつくっていきたいと思います。

profile

向井理(むかい・おさむ)

 1982年、神奈川県出身。明治大学農学部生命科学科時代には遺伝子工学を専攻。バーテンダー時代にスカウトされ俳優に。2010年、NHK連続テレビ小説「ゲゲゲの女房」に水木しげる役で出演して大きな話題となり、映画、ドラマ、CM等幅広いジャンルで活躍。2011年5月に映画「パラダイス・キス」、同年秋には映画初主演となる作品「僕たちは世界を変えることができない。But, we wana build a school in Cambodia.」が公開予定。


iichiko presents
ザ・シェイプ・オブ・シングス 〜モノノカタチ〜


日時
2011年3月16日(水)18:30開場/19:00開演
17日(木)12:30開場/13:00開演

会場 iichiko音の泉ホール
原作 ニール・ラビュート
演出 三浦大輔(ポツドール)
出演 向井 理、美波、米村亮太朗、川村ゆきえ
料金 全席指定 7,000円、学生席(高校生以下)3,000円
※学生席は3月16日(水)公演のみ販売
主催・お問い合わせ
(財)大分県文化スポーツ振興財団 TEL 097-533-4004

公演の前でも、後でも、お勧めの1枚、1冊
英国ロイヤル・バレエ団「ジゼル」
映画『ボーイズ・オン・ザ・ラン』
発売元:アミューズソフト/小学館
税込価格:5,040円
(c)2010花沢健吾「ボーイズ・オン・ザ・ラン」製作委員会

 花沢健吾原作のコミックを、三浦大輔が初めてメガホンをとり映画化した作品。『ポツドール』の米村亮太朗も出演。舞台では低俗で下品なモノの中から“人間の本質”をあぶり出すと言われる三浦ワールドが映画でも炸裂! ダメダメなサラリーマン・田西敏行の人生にある日、突然チャンスが巡ってくるが…?! 三浦大輔の“映画”と“舞台”での表現の違いにも注目したい。

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