Vol.49 2010 SUMMER

特集/インタビュー バレリーナ上野水香

 日本人離れした九頭身の体形、可愛らしさと美しさを兼ね備えた演技、そしてすらりと伸びた手足から放たれる独特のオーラ―
 上野さんの舞う舞台には、いつも異次元の美があふれています。そんな上野さんの”素の姿“を発見するために、東京・目黒にある東京バレエ団を訪ねました。

 ― 今日はこの取材前に練習風景を見させていただいたのですが、その美しさについつい見とれてしまいました。プロポーションを保つ秘訣って何でしょうか。
 私、本当はすごく太りやすい体質で、スタイルを維持するのが苦手なんです。食べることも大好きですし。でも、油を控えたり、野菜を摂るなどの意識はしていますね。あとはたくさん練習をすること。そして1日1時間は半身浴をして新陳代謝を促進させ、さらにオイルマッサージでリンパの流れをよくしています。そうした積み重ねが大切ですよね。
バレリーナ上野水香さん

― 9月には大分で「ジゼル」を演じられるわけですが、この演目の魅力を教えてください。
 「ジゼル」は昼間の森の場面と夜の墓場の場面の2幕仕立ての話で、とてもドラマティックに展開します。第1幕では村娘であるジゼルの恋がはつらつと描かれますし、第2幕の精霊の世界は一転して、幻想的な美しさを持っています。観ていただければ、ジゼルの悲しい恋物語に引き込まれるのではないでしょうか。そのためには、私の演技がうまくなくちゃいけないんですけど(笑)。
 あとこの演目は、お城や林のある古風な世界観だったり、衣装がすごく重厚だったりと、現実とはかけ離れた舞台です。日常の生活をしばし忘れて、タイムスリップした夢の世界に浸っていただきたいですね。
バレリーナ上野水香さん

― 恋するジゼルを演じるにあたって、楽しい面、難しい面はどんなところでしょうか。
 楽しい、難しいというよりも、ジゼルを演じていると彼女の人生そのものに入り込むような感覚になりますね。バレエの演目には、ストーリーのないものや抽象的な作品も多いのですけど、ジゼルはリアルな女性の気持ちが前面に出ます。ですから、感情移入もしやすいですし、すごく演じがいがありますね。
 私は、ジゼルはすごくピュアで感受性の強い女性だと思っています。ピュアだからこそ、目の前で男性に裏切られると過剰なまでに反応してしまう。そんな真っ直ぐで一途な気持ちを感じていただきたいです。

― そんなジゼルの純粋さは、上野さんの性格と近かったりするのでしょうか。
 そうですねぇ(笑)。私は純粋というよりも、根は単純なんですよ。恋愛にも真っ直ぐですし、だからジゼルにも感情移入してしまうのかもしれません。そうやって感情移入することで、お客さんに、より分かりやすく伝えることができたら嬉しいですね。

― さて、上野さんは2004年に東京バレエ団に移籍したわけですが、海外からもたくさんのオファーがあったと聞いています。
 確かに海外からもオファーをいただきましたが、活躍の場を海外に移すという考えはなかったです。牧阿佐美バレヱ団では子役からスタートして、日本と海外を行き来しながら活躍する牧さんの生き様に憧れて、私もいつかはこうなりたいとがんばってきました。ありがたいことに、私も少しずつ国内外の舞台で踊れるようになってきましたが、やはり私は日本人ですし、日本の観客にもっともっとバレエの魅力を伝えることが使命だと思っています。
バレリーナ上野水香さん

― ただ、日本でバレエというと、ハードルが高いと敬遠しがちな人が多いのも事実です。上野さんの考えるバレエの魅力とは?
 バレエはセリフのない総合芸術です。オペラも総合芸術ですが、バレエにもオーケストラがあり、舞台芸術がある。ただ、バレエでは声が出せません。その代わり、体全身で表現しないといけない。目の動きひとつ、指の動きひとつにも感情が込められています。バレエを初めて鑑賞するお客さんは、その点に一番驚かれるみたいですね。

― 大分公演が近づいてきましたが、地方公演の楽しみは何でしょうか。
 温泉が大好きなんですよ。地方公演のときは、劇場の近くの温泉を探して、劇団内の友人といつも行きますね。最高にリラックスできる瞬間です。大分には初めて行くのですが、ぜひ別府温泉に行ってみたいな。

 もう10年以上も日本バレエ界の第一線で活躍しながら、少女のようなピュアさを内に抱き続ける上野さん。彼女が演じる、無垢な美しさを持った「ジゼル」が今から楽しみです。

バレリーナ上野水香さん
profile

バレリーナ

上野水香(うえの みずか)さん

1977年、神奈川県出身。5歳からバレエをはじめ、15歳でモナコのプリンセス・グレース・クラシック・ダンス・アカデミーに留学。2年間通った同アカデミーを首席で卒業すると、牧阿佐美バレヱ団に入団。1998年に世界的な振付師、ローラン・プティの「ア・リタリエンヌ」に主演したことで一躍脚光を浴び、その後は日本バレエ界を代表するプリマとして活躍する。2004年に東京バレエ団に入団し、プリンシパルとして国内外で活躍中。

iichikoグランシアタ東京バレエ団 「ジゼル」全2幕
iichikoグランシアタ 東京バレエ団 「ジゼル」全2幕

日時 2010年9月21日(火)17:30開場/18:30開演
※17:45〜プレトークあり
会場 iichikoグランシアタ
出演 上野水香、高岸直樹、井田勝大(指揮)、
関西フィルハーモニー管弦楽団
料金 GS席9,000円、S席7,000円、 A席5,000円、
B席4,000円、 学生2,000円
主催・公演に関するお問い合わせ
(財)大分県文化スポーツ振興財団 TEL097-533-4004

公演の前でも、後でも、 お勧めの1枚、1冊
英国ロイヤル・バレエ団 「ジゼル」

英国ロイヤル・バレエ団 「ジゼル」
(全2幕・ライト版/DVD) 発売元/ コロムビアミュージックエンタテインメント
価格/5,040円(税込)

ジゼルが“当たり役”となった、英国ロイヤル・バレエ団のプリンシパル、アリーナ・コジョカルが演じる舞台。はかなさと力強さを併せ持つコジョカルの、切なくも美しい踊りに注目。

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