Vol.49 2010 SUMMER

舞台裏の特別席

ダヴィッド・ゲリンガス チェロリサイタル

2010年5月19日(水) iichiko 音の泉ホール

ダヴィッド・ゲリンガス チェロリサイタル

ダヴィッド・ゲリンガス チェロリサイタル

 


チェロは歌いかける。
作曲家の願いを乗せて


 深い深い表現力と技巧で大分のファンを虜にしたダヴィッド・ゲリンガスさん。「鳥の歌」など5曲ものアンコールで拍手に応えたコンサートから一夜明けた朝、お話をうかがいました。


―昨夜は、とても素晴らしいコンサートでした。

 演奏家にとっては、コンサートそのものが人生の一部です。コンサートを開くこと、チェロを弾くことそのものを私は幸せに感じていますが、今回も多くのファンが聴きに来てくれてうれしく思いました。

―観客は、最後の音が消え入るまでシーンと耳を傾けていました。

 みなさん寝ていたのでは(笑)?! これもうれしいことですね。

―ですから、ホールが静寂に包まれる瞬間が印象的で。

 コンサートでは、演奏家と観客は密接につながっています。演奏家は弾くことに専念し、観客は聴くことに専念する。静寂のあるコンサートは、とてもいいコンサートだと思います。

ダヴィッド・ゲリンガス チェロリサイタル

―バロックから近代まで、幅広い曲で楽しませてくれましたね。

 観客の知らない曲を紹介していくのが、演奏家の役割のひとつだと考えています。みなさんを新しい世界に誘い、発見をしてもらいたいので、いつもいろいろな構成を考えます。コンサートの途中にアイデアが浮かんでくることもあるんですよ。

―ピアノの杉目奈央子さんとの共演はいかがでしたか?

 彼女は私のことをよく理解してくれました。素晴らしかったです。

―ところで、何歳からチェロを弾いているのでしょう?

 6歳からずっと弾いています。チェロはとても人間的な音色でしょう?! チェロの魅力は、歌う楽器であること。私の2歳になる孫も「チェロは大好き! チェロは歌うんだもん」と言うんです。子どもは正直ですね(笑)。

―今回はマスタークラスも行いますが、若い演奏家にはどんなことを伝えたいですか?

 大事なのは“聴く”こと。絵なら目に見えますが、音楽は聴こえて初めて生き返ります。だから、作曲家が曲のどの部分にどんな願いをこめているのか、よく聴いてほしい。

―上手になるには、どんな練習をしたらよいのでしょう?

 プロの演奏家として、表現することを学んでいかなければいけません。そのためには技術も伴わなければ表現する能力が生かされませんが、人間は、何でもできる可能性を持っていますよ。

―大分での時間は楽しめましたか?

 コンサートが終わって、いちばん楽しみなのがディナーです!今回は寿司を食べました。大分は信じられないくらい自然も多くていい所ですね。またここに帰ってきて、みなさんにお会いしたいと思います。

  芸術家として本当に真摯な方で、現代の作曲家がこぞって曲を捧げるというのも納得。インタビューの後のマスタークラスでも、「音楽は人生を表現するもの。それを通じて、演奏家は人を幸せにできる」と、素敵なメッセージを伝えていました。


profile

チェリスト/指揮者 ダヴィッド・ゲリンガス
 リトアニア生まれ。現在、最も多彩な演奏家のひとりであり、バロック初期から現代音楽にいたる幅広いレパートリーを誇る。また、世界各国でマスタークラスも頻繁に行っている。2006年4月から、九州交響楽団の首席客演指揮者として活躍中。

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