Vol.48 2010 SPRING

特集 iichikoグランシアタ<br>ジュニアオーケストラ第1回定期演奏会
ロッシーニ、モーツァルト、チャイコフスキー。
そしてアンコールのエルガーまでたっぷり聴かせたジュニアオーケストラ。
堂々として、“ジュニア”だけど決して演奏はジュニアではないそのハーモニーは、約2000人の観客の心を打った
 「ブラボー! ブラ〜ボ!!」
 チャイコフスキーの交響曲第5番、第4楽章が終わったまさにその瞬間、客席から喝采が飛んだ。称賛の拍手が鳴り始めるのも、ちょっとフライングぎみにさえ感じたほど。舞台にいるのは、どこからか来た著名なプロオケだっただろうか?! いや、紛れもない”ジュニア“である。その子どもたち95人の熱演に、聴衆の誰もが「ここまでスゴイとは」、と驚かされた。
 4月3日、iichikoグランシアタ・ジュニアオーケストラ第1回定期演奏会。この日、タクトを振ったのは、日本の若手指揮者の中でも特に将来を期待されている、下野竜也さん。そのエネルギッシュな指揮に導かれ、ジュニアオーケストラはみごとにロッシーニとモーツァルト、チャイコフスキー、そしてアンコールのエルガーまでをこなした。弦楽器の優雅でやわらかな響き、管楽器はよく音が出ていたしソロもたっぷり聴かせた。打楽器も堂々としていた。そんな素晴らしい演奏に、聴衆は幾度となく感動の波にさらわれたのである。
 実は、演奏会の直前までオーケストラは未完成の状態だった。間に合うのか? そんな心配も過ったくらいだ。もちろん、1年間の猛練習があって技術的に問題はなくなっていたが、例えばついて行けなくなる子がいたら置き去りで、調和がまるで積み木を崩すようにバラバラッとなるシーンが度々見られていたのである。マロ先生(ジュニアオーケストラ芸術監督の篠崎史紀さん)たちは「オーケストラとは互いを思いやること」と言うが、そうはなりきれていなかった。
 ところが本番。子どもたちは素晴らしい”オーケストラ“となった。その変化を最も認めたのが指揮者の下野さんだ。
 「嬉しかったのは、みんなが上手に弾けたということではなく、誰かが遅くなったら合わせようとする空気が舞台の上で流れ始めたこと。これぞオーケストラだと思った」
 はたして、本番前の短期間で子どもたちに何が起こったのだろう? きっかけの一つは、2月末のNHK交響楽団大分公演。この日、コンサートの幕が開く約1時間前までN響講師陣によるレッスンが行われており、練習後、ほとんどの子どもたちがコンサートを聴きに行っていた。しかも曲目は、ジュニアオケと同じチャイコフスキーの5番。さっきまで教わっていた先生たちの生演奏は最高のお手本であり、大いに刺激となったはずである。また本番が近付くにつれ、「お客さんに聴かせるのだからしっかり演奏しなければ」というプロ意識が芽生えていたし、加えて4月1日に指揮者の下野さんを迎えたリハーサルが始まると、これまで何を目的にやってきたのかを再確認できたようだ。そんな気持ちがひとつになって、子どもたちは演奏会を大成功させた。
 ただ、1年目の成功を最初から信じてやまなかったのが、芸術監督のマロ先生だった。選曲にチャイコフスキーを挙げたとき、無理だという意見も出るなかで、マロさんは言ったとか。
 「子どもたちの成長力はすごい。僕は絶対できると思う」
 オケのオの字も知らなかった子たちが、多くの人に学び、年代の違う仲間と音楽を楽しむ喜びを知りながら大きく成長した1年目のジュニアオーケストラ。子どもたちは、グランシアタで奇跡を見せてくれた。ほんとうに、子どもの可能性は計り知れない。
 さて2年目は? 第2回の定期演奏会は、来年3月27日。今度は、ドヴォルザークの『新世界』に挑戦する。

指揮者下野竜也さん

指揮者

下野竜也さん
 マロさんから「大分でジュニアオケを立ち上げるから指揮をやって!」と電話があり、「ぜひやらせていただきます」とお返事しました。子どもたちは、知らない大人がくるわけですから緊張していただろうし、僕も、相手が大人だろうが子どもだろうが初めてのオケというものは緊張します。そんななか、本番前の3日間リハーサルを重ねるなかで、子どもたちには、一緒に演奏するとはどういうことかを感じてもらいたかった。子どもの年代は幅広いですが、そのどこに照準を合わせるかが問題ではなくて、いろんな年代が集まって音楽をやる、その楽しさを知ることが大切だと思いました。
 オーケストラは、相手への思いやりがないと成り立ちません。子どもたちにそういう話をしたら、周りの音をよく聴き、指揮をよく見て、考えることが出来てきて、本番でそれが発揮されていたのがすごく嬉しかったです。また、子どもたちは、練習中はおとなしいのですが、休憩になるとはしゃいだりして仲が良くて、そういう部分を見ているのも面白かったですね。
 このオーケストラは、違う年代の仲間と一緒に過ごし、遊ぶ場であってほしいし、いずれ「ジュニアね」と言えば通じるくらいの存在になり得ると思うので、多くの人に演奏会に足を運んでほしいし、音楽をやっている子はどんどん応募してほしいと思います。

profile

1969年鹿児島生まれ。鹿児島大学教育学部音楽科を経て、桐朋学園大学音楽学部附属指揮教室で学ぶ。1996年にはイタリア・シエナのキジアーナ音楽院でオーケストラ指揮のディプロマを取得。1997年から1999年まで大阪フィルハーモニー交響楽団指揮研究員として、故朝比奈隆氏の薫陶を受ける。1999年文化庁派遣芸術家在外研修員に選ばれ、ウィーン国立音楽大学に留学、2001年まで在籍。デビューのときから持ち続ける「楽譜に忠実に。作曲家の意図するところをどこまで汲み取り、素直に表出できるか」との思いがある。2006年から読売日本交響楽団の正指揮者に就任。正指揮者は同楽団にとって初の称号であり、これまで以上に大きな期待と注目が集まっている。


iichikoグランシアタ・ジュニアオーケストラインスペクター長宮邉健太くん

iichikoグランシアタ・ジュニアオーケストラ インスペクター長

宮邉健太くん
 「どうなるんだろう…」と練習のたびに思っていました。でも、本番が近付くにつれてみんなの気持ちが変わりました。コンサートには知り合いもいっぱい来てくれるし、お客さんに聴かせると思うとヤル気が出てきて。今日は、僕はすごく緊張していっぱいいっぱいだったけど、みんなすごくいい演奏ができたと思います。みんなとは、最初は挨拶を交わすくらいだったのに、今はとても仲良くなりました。先生たちからは、演奏に関わる基本的なことをしっかり習ったし、楽しく音楽をやることを学んだ気がしています。来年も、もっと上達するようにがんばりたいです。

iichikoグランシアタ・ジュニアオーケストラ音楽監督 川瀬麻由美さん

iichikoグランシアタ・ジュニアオーケストラ音楽監督

川瀬麻由美さん
 最初から最後まで自分自身にも緊張感がありましたし、鳥肌が立つ部分も、感激する部分もと、こんなにいろんな感情が一気に込み上げてきたのは、自分の演奏ではなかったことかもしれません。子どもは1年でものすごく上達します。だからこそ今しかできないことを勉強してほしい。今回はゼロからの出発でしたが、来年に向けては、まだ出し切れていない部分を引き出して指導していきたい。新しく入ってくる子どもたちがいて、卒業していく子どもたちもいるわけですが、ジュニアオーケストラのメンバーだったことを誇りに思う子どもたちがいることが嬉しいし、責任をすごく感じています。

iichikoグランシアタ・ジュニアオーケストラ団長(財)大分県文化スポーツ振興財団理事長 立花旦子さん

iichikoグランシアタ・ジュニアオーケストラ団長(財)大分県文化スポーツ振興財団理事長

立花旦子さん
 とにかく感動したというひとことだけです。途中、何度も何度も涙が出ました。今日の演奏を聴いてくださった方は、みなさん満足していただけたのではないでしょうか。ジュニアオーケストラの主な目的は、学年が違っても、多くの人たちとコミュニケーションを取れるようになることや、人を思いやったり尊重することを学ぶことによって立派な大人に成長してくれることですが、大きい子が小さい子の面倒をよくみるなど、その目的は十分に達せられたと思います。2年目も新しいメンバーが加わりますので、とても楽しみにしています。

出待ち取材!BRAVO!


 自分が管楽器をやっているということもあり、ジュニアオーケストラの立ち上げに興味を持って、聴きにきました。難しい曲なのに、管楽器と弦楽器がよく調和していて、素晴らしかった。

―三浦信幸さん(40代)


 正直言って、こんなにレベルが高いとは思っていませんでした。年齢の幅がかなりあるにもかかわらず、短期間でよくここまで出来たと驚きました、すごいですね。

―岩豪友樹子さん(50代)


 子どもの本番を見にきました。学校などでも練習をがんばっていましたが、想像していたよりずっと良かったですね。これからもみんなと仲良くやってほしい。

―大杉天伸さん(40代)


 ピアノをやっている響くんは「打楽器が良かった。カッコ良かったから、自分も舞台に出たいと思いました」。数年前までサックスアンサンブルをやっていたというお母さんは「技術的なことも想像以上で、最初の音から響いていました。完成された音が出ているのに、本当に驚きました」

―佐藤智子さん(30代)、響くん(11歳)


 ヴァイオリンで子どもがジュニアオーケストラのメンバーに入っています。小さい子どもたちもがんばったので、刺激を受けて引っぱっていってもらったのではと思います。先生方の引っぱる力も素晴らしいですね。

―山本真理子さん(60代)


 迫力があってすごかった!

―大波多直登くん(11歳)


 子ども2人が団員です。ステージで演奏する子どもたちを見て、「こんなに成長して大きくなっているんだ」とびっくり、感動しました。

―平野祥司さん(30代)

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