Vol.48 2010 SPRING

舞台裏の特別席

人形浄瑠璃 文楽 大分公演

2010年3月4日(木) iichiko 音の泉ホール

人形浄瑠璃 文楽 大分公演

人形浄瑠璃 文楽 大分公演

 


女方と立役の両方をやれる人形遣いをめざして。


 今年も文楽の大分公演が催された。戦国時代の勢力争いに題材を得た名作「本朝廿四孝」で、長尾(上杉)謙信の家来・白須賀六郎役を務め、昼の部公演を終えたばかりの吉田一輔さんに、お話しをうかがいました。


―世襲が少ない文楽の世界で、父親や祖父と同じ道を選んだきっかけは?

 中学1年生の時、同じ年の子が文楽に入ったことを親から聞いたんです。それなら、自分も早よ決断せなあかんなと。父親に入りたいと言うたら、「あかん、お前には無理や、修業に耐えられるわけがない」と反対されました。それでも僕がやりたいと言うんで、母の口添えで、中学2年生から研究生になりました。

―研究生になってみて、どうでした?

 言われたとおり厳しい世界やと思いました。最初は動かない役の足を持たせてもらうんですけど、30分、40分とじっとしてなあかん。もう、これだけで「でけへん!」と。

―どの世界でも、親子で同じ道を歩くと、父親と比べられるのが常ですが、プレッシャーになりませんか?

 追いつけるわけがないくらいに思いつつも、追いつきたいという思いでやってますから、あまりプレッシャーには感じないですね。

人形浄瑠璃 文楽 大分公演

―楽観的ですか?

 そう言われるくらいの方が頑張れる気がするんです。実際、人形を持つ役が上がってきて、これはお父ちゃんがやってたんやとよく言われますが、その言葉もプラスになっていると思ってやってます。

―最初の師匠でもある父・桐竹一暢さんの好きな所は?

 すごく品がありましたね。この頃、何となく似ていると言われるようになってきたのはありがたいなと。

―今の師匠である人間国宝・吉田簑助さんと身近に接していて感じることは?

 今は師匠の左遣いを全部やらせてもらってますので、たしかに一番近くで接してますね。お客さんと僕らが見て感じることは同じで、人形が生きている。人形に血が流れているような体の動きなんです。普通、人形遣いと言うのは、相図で動くんですけど、その相図が出る前に簑助師匠が次に何をしたいのかが伝わってくる感じがするんです。

―これからはどういうところを目指していますか?

 役柄的には、女方と立役の両方をやれる人形遣いに。父親から修業をさせてもらったので、立役でも二枚目をやってみたいですね。

―文楽の担い手の一人として、レクチャー等で工夫されていることは?

 古典芸能は難しいというイメージがあるので、私の説明する言葉だけでも分かりやすく、あらすじの解説も難しい部分は避けて、見どころだけをお話してとっつき易くなるようにと心がけています。初めて見に来る人たちの窓口になって、ファン層を広げていかなくてはと思っています。

―ところで、昼公演を終えたばかりですが、大分のお客様の反応は?

 文楽をよくご存じの方が多いという印象で、楽しんで観てもらっていました。

―地方公演の楽しみは?

 大分公演では、やはり麦焼酎をいただいています。九州は美味しいものが多いので、太って帰りますよ(笑)。

時折、大阪弁を交えて、率直に語ってくれた吉田一輔さん。小さいころから文楽に接する環境に身を置いてきたことをすべてプラスに変えていくおおらかさを感じました。これからは吉田簑助師匠の左遣いにも目が行くことになりそうです。


profile

人形浄瑠璃文楽座 人形遣い 吉田一輔/
 昭和44年9月17日生まれ。父・桐竹一暢、祖父・桐竹亀松と、人形遣いの家に生まれ、昭和58年文楽協会研究生となる。平成12年に師匠でもある父親が亡くなり、人間国宝・吉田簑助に入門。最近は文楽レクチャーや講師でも登場する機会が多い。大阪出身。

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