Vol.47 2010 WINTER

世界を舞台に演奏活動を続けている「マロ」さんが、演奏家として、
また一人の人間として、心に残った人々との出会いを語ります。

マロな世界
第三話「遊びも自慢も上手かった小学校の同級生たち」

 小学校の友達って、つきあいが長く続くんだよね。利害関係がないから、純粋なつきあいが続けられる。職業もバラバラだけど会うと、35年前のクラスにすぐ戻る。「あの秘密基地、どうなった?」「探しに行こうか!」とか、今の仕事やそれぞれの家族の話をほとんどしなくても、延々と話が出来る。共通に好きになったものも、一緒に夢中になったものも多かった。当時は、新幹線が開通したばかりで、時刻表を見ながら「もうすぐ来るぞ!」と待ち構えて、教室の窓から新幹線が通るたびにワァーワァー言って喜んでいた。
 ゲームも遊び道具もない時代だったので、遊びを創り出すのも上手い。牛乳瓶のフタを集めてパッチンの代わりにしたり、釘を拾ってピカピカにして遊んだりと、頭と体を使って自分たちで楽しいものを生み出す。まさに教材のない教育。毎日新しい発見があり、日々変化に富んでいた。いつも一緒に遊んでいるから、友達の体調の悪さも気付くし、友達が元気だと自分も元気でいられた。実に人間らしいというか、スキンシップのあるコミュニケーションがごく普通に取れていた。その頃の友達は、お互いが元気に過ごすための活性剤だったんだろう。だから学校に友達がいて、給食が食べられるだけで満足だった。
 それに、クラスに何人もムードメーカーがいて、それぞれ得意分野があったな。ハゼ釣りが上手な子、カブトムシを捕るのが上手い子、縄跳びをやらせたら永遠に飛べるんじゃないかと思えるほど運動能力の高い子、牛乳を飲むのがものすごく早いとか、もちろん勉強の得意な子もいた。子供ながらにお互いがそのどれをも認めていた。自分の得意分野を自慢して、他の友達の得意分野は「あいつ、すげー!」と、そのこと自体がまた楽しい話題だった。たまたま僕の周りにいた友達がみんなポジティブだったのかもしれないけど、多分、他のクラスも同じだったと思う。
 そんな友達たちが、今の自分にどんな影響を与えたのかは分析しにくいけど、性格形成や色々な面で影響を受けたと感じている。ジュニア・オーケストラを指導する上でも、楽器を弾く上でも、企画案のプレゼンテーションにおいても、アピールする必要がある場面は多い。また、話し合って解決することが大事とか、約束は守るとか、社会の中で大事なことは何かなど、影響を受けていることは多々ある。
 「放課後、いつもの場所に集合だぜ」というのは、友達同士の大事なアポイントメント。時計や携帯電話を持っていなくても、必ず約束した時間に集まっていた。人を助けることも、人の欠点を見るよりいいところを見なきゃいけないことも、自然と分かっていた気がする。友達と遊ぶ中で、社会勉強の基礎を学んでいたんだろうね。


PROFILE

NHK交響楽団第一コンサートマスター/ヴァイオリニスト
iichikoグランシアタ ジュニアオーケストラ芸術監督
篠崎史紀(しのざき・ふみのり)

1963年、北九州市小倉出身。3歳の時よりヴァイオリンを始め、高校卒業と同時にウィーン市立音楽学院に留学。翌年コンツェルト・ハウスでコンサートデビューを飾り、その後ヨーロッパの主要なコンクールで数々受賞。1996年、東京ジュニアオーケストラソサエティを立ち上げ、芸術監督を務める。
1997年、34歳の若さでNHK交響楽団のコンサートマスターに就任。ソリスト、室内楽奏者、指揮者として国内外で活躍する中、2008年、iichikoジュニアオーケストラの芸術監督に就任。このコーナータイトルの「マロ」は二ックネーム。愛称の由来はそのうちご本人の口からお話しいただくことに。

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