Vol.43 2009 WINTER
開館10周年記念特別事業
ロシア国立
ボリショイ・バレエ「白鳥の湖」全幕
2008/11/29(土) 14:00開演
iichikoグランシアタ
誰もが一度は聞いたことがあるバレエ団。そして、誰もが一度は耳にしたことがあるあの名曲、そしてあの踊り。ロシア国立ボリショイバレエ、白鳥の湖全幕という黄金の組み合わせで実現した今回の舞台は、iichiko総合文化センター開館10周年記念特別事業として企画されたもの。これぞ”古典“、これぞ”白いバレエ“、バレエ界の頂点に君臨するボリショイの白鳥の湖は、観客を大きな感動に包んだまま、驚きのラストシーンに向かって行った。
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僕も多くのバレエ団に所属してきましたが、ボリショイというのはやはりとても特別な存在です。バレエが好きだからといって入れる所ではない。ロシアバレエの英才教育を受けたエリート中のエリートだけが入団を許されるところ。まず何といっても規模が違う。ヨーロッパの有名なバレエ団でも4、50人規模というのが平均的なところなのにここでは200人以上。さらにここではバレエのためだけに必要なものが全て揃えられているんです。衣装も舞台装置も音楽も、ありとあらゆるものがこのバレエ団のためだけに存在している。よく、バレエは総合芸術というけれど、全てにおいてそれぞれのエキスパートが揃っている、それがボリショイであり、それが実感できるところなんですね。ロシアの威信を背負っている、それが見えるバレエ団でもあります。団員も凄いが教える先生たちがまた凄い。教科書があるわけではなく、全ては人を介して教えられていきます。僕が演じている道化師も、まず役作りから入りました。先生はこう言ったんですね。「一口に道化師といっても、街頭で皆を笑わせている道化師とは違う。中世の貴族の舞踏会という場所で、ゲストや王様、お后様を楽しませるのが今回の道化師役」と。身のこなしから身ぶり手ぶりの動作、そのふざけ方までも全く違う、ちょっとすました道化師なんです。その役を演じるにあたって役作りのアドバイスや指導を受けたのはこのバレエ団が初めてでした。このバレエ団もそうですが、歴史や伝統を重んじるところや先生や先輩を大切にするところ、非常に日本に通じるところがある。勤勉で和を尊び、人の心を大切にする日本人の良い部分をロシアの人たちはとても尊敬しているんですね。だからロシア人って、日本人のこととても好きなんですよ。舞台に上がれば、ロシア人も日本人もないけど、僕が日本人で得をしたなと思うこと、こちらではいっぱいありましたから(笑)。
- PROFILE
- ボリショイバレエ史上初の外国人ソリストであり、団員からは“モリ”の愛称で親しまれている。今回のような道化師や悪魔といった個性的な役、キャラクターダンスのスペシャリストとして目の肥えたボリショイファンの間でも人気が高い。「個性は出そうと思って出すものではない、舞台の中でいつの間にか表現されているもの。それほどまでに舞台という所は踊り手を丸見えにしてしまう所」と話す。岩田さんを追い続けたNHKの人気番組『プロフェッショナル』が2008年12/9放送された。すべてに完璧な中にも完璧な美が要求されるボリショイの中で、身長166cmの岩田さんがいかにしてソリストの地位を築いてきたかが語られている。