Vol.42 2008 AUTUMN

大分から、いつかは世界へ
 iichiko総合文化センターは、誕生から10周年を迎えました。その間、さまざまなジャンルの芸術家を招き、鑑賞いただく機会をより多く設けて参りました。特に昨年は「人づくり事業」に力を注ぎ、「見る」「聴く」から、体感するワークショップへの参加に力を注ぎ、その成果は目をみはるものがありました。そこで、今年度からは「見せるだけの公演にとどまらない、人づくりに焦点をあてたプログラムづくり」を目指し、「ジュニアオーケストラ」の設立に向けて、大きく一歩を踏み出します。子どもたちがオーケストラのレッスンや演奏を通じて、豊かな感性を養い、舞台芸術各ジャンルとの共演も望まれるような、本格的なホール付きオーケストラの育成を目的とするものです。そのために、芸術監督にはNHK交響楽団第一コンサートマスターの篠崎史紀氏を迎え、講師陣はトップクラスの方々がずらり。地元・大分の音楽レベルの向上はもちろん、将来は世界的に活躍する演奏家の誕生もと、夢ふくらむジュニアオーケストラのスタートはいよいよです。

ジュニアオーケストラは音楽を通して「人」を育てる場所

子どもの持つ可能性は無限大!技術よりも心を大切にしたい

 今回ジュニアオーケストラの芸術監督を務めることになった、NHK交響楽団の第一コンサートマスター、篠崎史紀氏にこのオーケストラへの想いや展望について語っていただきました。

 ヴァイオリンなどの弦楽器を演奏するほとんどの子どもは、個人で練習をしており、自分と同じことに興味を持つ同年代の人と接する機会がなかなかありません。私は子どもの頃オーケストラに入っていて、自分と同じように音楽にエネルギーを注ぐ仲間と触れ合うことで、様々なものが見えてくるのだと実感しました。音楽は明確な答えがない、感性の世界。その答えのないものを通じて仲間と理解を深めていくことはとても素晴らしいことだと思います。そして、子どもには無限の可能性があります。このオーケストラを、九州の子どもたちが新しい可能性を見つけ、その可能性を広げていく場にしていきたいと考えています。
  私は、『東京ジュニアオーケストラソサエティ』の芸術監督もしていますが、そこでは子どもたちが何でも自主的に考え、積極的に意見を出せる環境を作っています。そして必ず少数意見にも耳を傾けています。日本では、みんなと同じ考えを持たなければいけないといった風潮がありますよね。もちろん、秩序を守ることは大切ですが、子どもの時からそればかり求められるのは可哀想な気がします。子どもたちには人と違う意見でも怖がらず、自分を主張する勇気を持って欲しいのです。
  子どもが成長をしていくうえで一番大切なことは、結果ではなくプロセスだと考えます。大人が全部指示をして結果を出させることは簡単ですが、それでは子どもは冒険心や考える力を失ってしまいます。目標を達成するためにどうすべきか、自分で考えて動いたなら、どんな結果でもその経験は人生においての貯金になっていきます。そういった意味では、ジュニアオーケストラは音楽のプロを作る場所ではなく、「人」を作る自己開発の場所だと言えます。大事なのは、技術ではなく、もっと上手に弾いてみたいという向上心やもっと楽しみたいという気持ち。頭であれこれ考えず、何か直感で感じるものがあったら、とりあえず覗い てみてはいかがでしょうか。

言葉がなくても通じるものがある。音楽ってすごいんです

”まろ“先生とは幼なじみ。東京でコンサートマスターとして活躍した後、現在は大分県立芸術文化短期大学准教授の川瀬麻由美さんも講師陣の一人。川瀬先生の、ジュニアオケにかける思いとは?

 大分に赴任して7年になりますが、街中に建てられた音の泉ホールやグランシアタという立派なホールが、あまり使われていないことにいつも疑問を感じておりました。東京ではどのホールも年中公演が催されているのに。ということは、生の音楽を聴く機会が少ないということになりますよね。そんな大分の状況から、この場所で私たちにできることはなんだろう?! と、ずいぶん前からマロさんと話をしておりました。
  そこで生まれた今回の「ジュニアオーケストラ」の構想。対象者が小学校3年生くらいから20歳までと年齢の幅は広いのですが、上級生が下の子の面倒をみたり、同世代で競争意識を高めたり、下級生は上に憧れを抱くなど、自然と一つにまとまっていくのではないかと期待しております。
  経験面でも様々な子どもたちが集まってくると思いますが、教える側としては、当然より高いレベルを目指さなければなりません。しかし、ハードルが高すぎて拒絶反応を起こされても困ります(笑)。そこで、まずはレッスンに興味をもってもらうことが重要課題となります。トレーニングの積み重ねによって「できた!」という達成感を味わうことで、子どもたちの潜在能力を十分に引き出し、習得のスピードに合わせた細やかな指導が行き渡るよう務めたいと考えております。そのためにも各楽器ごとに講師を配置し、大分にいながらプロの講師とコミュニケーションを取れる場にもしたいですね。いい先生や仲間に出会えたことで、子どもたちはどんどん成長し、将来どこへでも羽ばたいていく可能性を持っていると信じております。
  「音楽」は言葉で表現する以上に通じるものがあるからこそ楽器を弾けることの素晴らしさを子どもたち自身が実感し、そして、オーケストラの一員として曲を作り上げる楽しさを伝えられたらと思っています。

NHK交響楽団 第一コンサートマスター
violinist
篠崎史紀
しのざき・ふみのり

 1963年、北九州市小倉出身。愛称“まろ”。3歳の時よりヴァイオリンを始め、高校卒業と同時にウィーン市立音楽学院に留学。翌年コンツェルト・ハウスでコンサートデビューを飾り、その後ヨーロッパの主要なコンクールで数々受賞。'96年東京ジュニアオーケストラソサエティを立ち上げ、芸術監督を務める。'97年、34歳という若さでNHK交響楽団のコンサートマスターに就任。ソリスト、室内楽奏者、指導者として国内外で活躍中。

大分県立芸術文化短期大学准教授
violinist
川瀬麻由美
かわせ・まゆみ

 桐朋学園大学卒業。東京シティフィルの副コンサートマスターを経て、読売日本交響楽団など日本各地のプロオーケストラのゲストコンサートマスターやサイトウキネンのメンバーとして、またソロや室内楽など国内外で活動。現在は大分県立芸術短期大学准教授。

iichikoグランシアタ・ジュニアオーケストラ(仮称) 団員募集!!

募集要項

団員資格
?オーケストラをやってみたいと思う小学校3年生くらい〜20歳まで
?積極的に活動に参加し、自らオーケストラの一員として努力できる者、指定された練習日に出席でき家庭でも毎日練習できる者
?活動に保護者の理解と協力が得られること。
募集期間
平成20年11月〜平成21年3月まで(予定)
オーディション
期  日 平成21年3月(予定)
審査員 芸術監督、講師
内  容 書類審査、面接、実技(基本的に課題曲はなし。現在学習中の曲を演奏)
※団員募集の詳細は、今後財団ホームページなどに掲載しますのでご確認ください。
練習
?月2回程度(原則として第2、第4日曜日)
?演奏会直前の強化練習
?合宿(基本的に夏休み中に夏季合宿を実施)
演奏会
■定期演奏会(夏休み期間中の8月)
  ただし結成初年度(平成21年度)は春休み期間中(平成22年3月)に開催する予定。
■特別演奏会(不定期)
  ミニコンサート、招待演奏、訪問コンサートなど
団費
?1人月額5,000円(年間60,000円)
?合宿費の一部(その都度徴収)

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