Vol.39 2008 WINTER

特集 バレエ

マラーホフの贈り物2008(バレエ・ガラ)

ウラジーミル・マラーホフ ―昇華し続けるバレエ界の貴公子

ウラジーミル・マラーホフ 
Photo by Kiyonori Hasegawa

 ダンサーとして、またベルリン国立バレエを率いる芸術監督として、バレエ界をリードし続けるウラジーミル・マラーホフ。その魅力はなんと言っても、柔軟性のある肢体がつくり上げるラインの美しさ、ふわっと浮き上がりそのまま空気と溶け合うようなジャンプ、そして異次元の空間から飛び出してきたかのような幻想性を彼自身の身体で見せてくれるところにある。そして、観る者をドラマの中に誘い込んでしまうその演技力。『ロミオとジュリエット』のロミオ、『ジゼル』のアルブレヒト、『マノン』のデ・グリューなど、マラーホフが演じる男性たちは、悲劇の中にまっしぐらに突き進んでいきながら、愛する女性のためにはどこまでも自分を捧げつくしてしまう。それが、自らをダンスの神に捧げたマラーホフ自身の生き様とも重なり、多くの観客の心を捉えて離さない。
  まず注目したいのは、ジェローム・ロビンズの『牧神の午後』。日本ではまだ一度も踊ったことのない演目だが、ベルリンでは既に上演しており、少年のもろさや危うさを感じさせるような舞台が大いに話題になった。ニジンスキー版とは異なり、ロビンズ版の舞台設定は、ダンス・スタジオ。若い男女のダンサーが、鏡の中に写る自分たちの姿を見ながら緊張感のあるダンスを繰り広げる。「少年のナイーブさ」はマラーホフがデビュー以来、内包し続けている個性であり、その個性にぴったり合致する作品と言えるだろう。一方『パキータ』では、ロシア仕込みの厳格な古典様式を、そして『ヴォヤージュ』では繊細な感性のきらめきと寂寥感を、私たちに堪能させてくれるに違いない。
  マラーホフのパートナーとして参加するのは、ポスト・ギエム世代の注目ダンサー、ポリーナ・セミオノワ。そののびやかな肢体が生み出すドラマ性豊かな世界を味わって欲しい。ボリショイ・バレエ学校時代にマラーホフに見出され、彼の薫陶を受け、大きく花開いた逸材だ。
  ボリショイ・バレエを代表するのが、セルゲイ・フィーリンとマリーヤ・アレクサンドロワ組。気品あるダンスール・ノーブルであると同時に、男性的な懐の深さを感じさせるフィーリンと、男性顔負けのテクニックの持ち主で、陽性の踊りが爽快なアレクサンドロワのコンビは目下絶好調。極めつけの『白鳥の湖』と『シンデレラ』を見せてくれることだろう。特に「黒鳥のパ・ド・ドゥ」は、華やかなテクニック満載の上、「誘惑する/される」瞬間を劇的に描いた見ごたえたっぷりのパ・ド・ドゥだ。
  アメリカン・バレエ・シアターからは、イリーナ・ドヴォロヴェンコとマクシム・ベロツェルコフスキーが参加。世界中に名ダンサーを送り出しているキエフ・バレエ出身の二人はプライベートでもカップルで、その息のあったパートナーシップでもよく知られている。ひときわ整ったプロポーションのカップルだけに、舞台に登場しただけで観客の目を釘付けにしてしまうだろう。『スプレンディッド・アイソレーション』では、マーラーの音楽と溶け合い流れるようなダンスを、『くるみ割り人形』では、きらめくような古典様式を踊りきってくれるはず。
  さらに若手の注目ダンサー、ベルリン国立バレエのヤーナ・サレンコはカナダ・ナショナル・バレエのズデネク・コンヴァリーナとコンビを組んで、『エスメラルダ』と『ドン・キホーテ』を踊る。どちらもテクニカルなパ・ド・ドゥだ。若い二人の爆発するようなエネルギーに期待したい。
  若手から旬のダンサーまでが参加し、ヨーロッパ、ロシア、アメリカのダンス・スタイルを一度に観られるガラ公演、マラーホフから私たちへのプレゼントは、多様化するバレエの現在の姿なのだ。

「マラーホフの贈り物2007」カーテンコールの様子 Photo by Kiyonori Hasegawa

マラーホフの贈り物2008(バレエ・ガラ)
日時 2008年2月15日(金) 18:00開場 18:30開演
会場 iichiko グランシアタ
出演 ウラジーミル・マラーホフ、ポリーナ・セミオノワ、マリーヤ・アレクサンドロワ、セルゲイ・フィーリン、東京バレエ団 他
演目 「牧神の午後」 「パキータ」 「ヴォヤージュ」
「白鳥の湖」より“黒鳥のパ・ド・ドゥ”
「シンデレラ」 「スプレンディッド・アイソレーション」
「くるみ割り人形」「エスメラルダ」 「ドン・キホーテ」
※演目は変更になる可能性があります。
料金 全席指定 4,000円 学生 2,000円(当日指定・25歳以下)
主催・お問い合せ/(財)大分県文化スポーツ振興財団 TEL097-533-4004
バレエ・レクチャー「マラーホフ・男性ダンサーの魅力(仮)」
日時
会場
2008年1月26日(土) iichiko グランシアタ
2008年1月26日(土) くすまちメルサンホール
2008年1月27日(日) エイトピアおおの
講師 守山実花
参加料 500円(小学生300円)
主催・お問い合せ/(財)大分県文化スポーツ振興財団 TEL097-533-4004

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