Vol.39 2008 WINTER

特集 バレエ マラーホフの贈り物2008(バレエ・ガラ)

バレエと言えば… 「クラシック、コンテンポラリーなど」

古典から現代まで

ウラジーミル・マラーホフ
ボリーナ・セミオノワ
『牧神の午後』
Photo by Enrico Nawrath

 「バレエ」と一口に言っても、その内容はさまざま。特にこの30年ほどは、様式や既成概念にとらわれない、ルールに縛られない「コンテンポラリー・ダンス」が登場し、バレエ界を席巻している。
  では、バレエ公演では、今どんなものが上演されているのだろう? 代表的なものをご紹介していこう。
  まずは「古典バレエ」と呼ばれるもの。これは19世紀に生まれた作品で、古典的な様式性をもった大規模な作品である。恋に破れ死んでしまった少女の霊が恋人を守り抜く『ジゼル』や、白鳥に姿を変えられてしまったオデットが運命の男性と出会う『白鳥の湖』などが代表的な作品。特に『ジゼル』の主人公で幻想の世界に引き込まれていく貴公子は、マラーホフの十八番。百合の花を一輪、また一輪と落としながら去っていく幕切れシーンの独自の解釈でも知られている。

ウラジーミル・マラーホフ『ジゼル』
Photo by Kiyonori Hasegawa

 20世紀になると、より自由な表現が生まれてくる。伝説のダンサー、ニジンスキーが踊ったことでよく知られている『薔薇の精』は、両性具有的な薔薇の精が主人公。これまたマラーホフの得意演目である。そのほか『ペトルーシュカ』『牧神の午後』などそれまでのバレエの概念を変えるような作品が登場した。そして1940年以降には、ジョージ・バランシンが活躍。バレエから物語を取り除き、純粋にダンスの美しさを見せるような作品を次々と発表した。『チャイコフスキー・パ・ド・ドゥ』は小品だが、音楽とダンサーが一体化して、身体で楽器を弾くようだ。
  文学作品をドラマティックに演出したのは、ジョン・クランコ、ケネス・マクミラン、フレデリック・アシュトン、ジョン・ノイマイヤーら。特にマクミランの『ロミオとジュリエット』は、若くして散った恋人たちの胸の鼓動がそのまま伝わるような切ない作品。マラーホフが踊ったロミオの透明感のある甘さは、名演の一つとして語り継がれている。ノイマイヤーの『椿姫』は全編ショパンの音楽を使い、原作にも登場する小説『マノン・レスコー』を劇中劇として登場させることで主人公たちの心の奥底をあぶりだそうとする傑作。マラーホフがかつて日本で披露した「黒のパ・ド・ドゥ」のドラマティックな演技も忘れられない。
  モーリス・ベジャールはスポーツ会場でバレエを上演するほか、ロック・グループQUEENの音楽を用いるなど、バレエの大衆化に貢献する一方、哲学的な作品やオペラを独自の解釈で演出した作品を発表。マラーホフが火の神ローゲを踊り、圧倒的な存在感を発揮した『ニーベルングの指環』がある。またローラン・プティはレビューの要素をバレエに持ちこみ、またいかにもフランスらしい洒落た感覚に富んだ作品でよく知られている。

ウラジーミル・マラーホフ『ジゼル』
Photo by Kiyonori Hasegawa

 80年代以降、バレエはさらに多様化していく。フォーサイス、キリアンなどの振付家が新しい美学をバレエに持ち込み、身体の使い方もずっと複雑なものとなった。ダンサーの体型の変化、テクニックの進化などの要素もバレエ表現を大きく変えている。マッツ・エック、プレルジョカージュなど人間の本能をとことん追及する振付家も登場。
  複雑な身体の使い方を要求される現代作品を次々と踊るダンサーたちの身体はさらに進化し、古典バレエを踊るときでも、以前とは違う表現が生まれている。バレエは現在進行形で進化していく芸術なのだ。

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