Vol.39 2008 WINTER

Musical instruments to read
読む楽器

笛

 月冴えた秋の夜、嫋々と静かに、遠くから聞こえる笛の音。京の五条の橋の上で、美少年の牛若丸が笛を吹きすましつつ、弁慶と出会う場面に、又、一の谷の合戦に於いて、熊谷直実が先陣を争っての前夜に、城中から漏れ来る笛の音を聞いて感に打たれたという。この笛の主こそ平家の若武者、平敦盛であった。この模様が「青葉の笛」の哀話となって今に伝えられている。日本の笛は、自然を映したり、取り込んだり、時には激しく描写をしたりと、悠々たる自然の移り変わりを奏でるのによく適していると思う。
  笛の素材は自然の竹から作られるが、選りすぐられた竹により、笛に進化したもの。雅楽に用いられる「龍笛」、能楽に使用する「能管」、「篠笛」は歌舞伎や民族芸能で用いられている。
  能管は全長40センチぐらいで、吹口の「歌口」と七つの「指孔」がある。この笛は音階にとらわれることなく独特の表情を奏でる笛で、超現実的な調べ、幽玄で洗練された象徴的な風姿を表わす事のできる、世界に類をみない笛だ。
  篠笛はポピュラーで見た通りの素朴で美しい横笛である。女竹「篠竹」と呼ばれる竹で出来ており、華奢な笛だ。七つの手孔に管の内面は漆を塗っただけの簡素な構造である。ひとつの笛で基本的に2オクターブ強の音が出るが、転調や移調がしにくいので、色々な長さの笛を使い分ける。一番長い、調子の低いものから順に一笨調子、二笨調子と呼び、一笨から十二笨まである。
  篠笛は繊細で美しく、素朴で柔らかい音がする。抒情歌的な曲を演奏する時には、歌詞の内容を理解して、うたうつもりで吹くと情景や感情の表現が更に豊かな音色になる。

文/横笛奏者 福原百桂 (ふくはら ひゃっけい)

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