Vol.39 2008 WINTER

幕が開く前に|公演を楽しむための予習ページ

マロ様ノ解説書

N響のカリスマ・コンサートマスター、
篠崎史紀さんが解説する、今更ですが、「N響って何?」

 優雅で遊び心豊かな音楽性、完璧なテクニックと、〈真珠を転がすような〉と評される美しい音。コンサートではソリストや指揮者よりもついつい気になって観入ってしまうことのあるN響のカリスマ・コンマス、〈マロさま〉こと篠崎史紀さん(写真)にN響のことを語っていただきました。大変面白く、また、羨ましかったのは、ヴァイオリンで、それも日本屈指の表現者である人が、言葉においても同様の表現者であったということ。篠崎さんの選んだ言葉からどんどんイメージが膨らんでいく、まさに豊かで楽しいマロ・ワールドにあっという間に引き込まれたインタビューでした。

一番古い

 何といってもこの古さでしょうね。80年の歴史があるんですから。つまり、昭和の始めにできたオーケストラで、前身は「日響」。弦楽器は公家、管楽器は軍隊の色合いが濃かったようなことを、先輩たちから聞いたことがあります。さらに、戦時中英語が禁止されていた時代の話なんてもう笑うしかないくらいひどい話です。トロンボーンを何と呼んでいたと思います? 先輩の話だと「真鍮曲がり金抜き差し自在管」。名称だけでもこの混乱ぶりの中で活動をやめなかった楽団なんです。

エキスパート

 これはN響の凄さでもあり、面白さでもあるんですが、その楽器のエキスパートが揃っている楽団ということですね。それぞれにコンクール優勝歴や凄いキャリアを持っているエキスパートが揃うとどうなるか。一人ひとりが洗練された音楽観を持ち、主張もあるけど、今自分に何を求められ、それをどうすればいいかを心得ているということになります。世界のトップクラスの実力を持ち、なおかつ世界中で勉強してきた人たちがここに集まっている、それがN響なんです。だったら、指揮者なんていらないじゃないかって聞かれることがありますけど、そこからがまたN響がN響たる所以なんです。

敬意

 N響が最も大切にしているもの。それが作曲家の思い。作曲家というのは、音楽を通じて何かを代弁する役割を果たすためにこの世に生を受けたように僕には見える。クラシックを演奏するということはクラシックの伝承文化だと僕は思うんですね。手がかりは作曲家が残したスコアにしかない。だからこそまずは忠実に演奏する。そして、そこに指揮者のアイディアを注入する。サヴァリッシュの指揮がまさにそうでした。そんなサヴァリッシュに今でもメンバーは敬意を払っている。それぞれが担うものは違うけど、皆で同じ楽譜を観て、その曲を再生していく、それが我々が演奏する大きな意義だと思うんです。僕たちの演奏活動はまず作曲家に敬意を払うところから始まる。演奏前には立ち上がって必ず礼をする。実はこれ、作曲家へのセレモニーなんですね。だから、N響を聴きに来てくださっているお客様の拍手もぜひこうあってほしいと思うんです。

山田晃子、準・メルクル

成功か失敗か

 2000人入るホールに10人しか入りませんでしたが、お客様は感動してました……ホールは満杯でしたが、大して感動してませんでした。どちらが成功かというと文句なしに前者なんですね。確かに数字的に見れば後者が成功です。でも、10人でも感動した、それを成功と見る、これが文化だと僕は思うんです。素晴らしい文明を持っている日本なのに、世界中から尊敬される文化を育てきれていない。その理由の一つにこの成功と失敗の価値観の違いがあるのではないかと懸念しているんです。

時間がつくる芸術

 家にいて世界中の音楽、世界中のアーティスト、世界中のオーケストラの音を聴くことができます。これらが繰り返し聞けるのに対して、コンサートは一度限りです。ただそこには家の中で聴くのとは全く違う空気が漂っています。演奏者の発するもの、会場のお客様が発するもの、それらが混在してつくり上げられた空気。これを体感する唯一の方法、それがコンサートに足を運ぶということなのです。今回の演奏会の面白さはドイツプログラムをたっぷり聴ける点。その特長をよく知る指揮者のキンボー氏はウィーンで一緒に勉強した後輩でもあり、今回自信作を持ってきたなって楽しくなりました。なかでもブラームスの交響曲一番の2楽章のソロなんてとても聞き応えあると思いますから楽しみにしていてください。

NHK交響楽団
日時 2008年3月6日(木) 18:15開場 19:00開演
会場 iichiko グランシアタ
出演 キンボー・イシイ=エトウ(指揮)、 アレクサンドル・メルニコフ(ピアノ)、
NHK交響楽団
演目 メンデルスゾーン/序曲「フィンガルの洞窟」 op.26
シューマン/ピアノ協奏曲イ短調 op.54
ブラームス/交響曲第1番ハ短調 op.68
料金 GS席6,000円 S席5,000円 A席4,500円 B席4,000円 
学生2,000円(当日指定)
公演に関するお問い合せ/(財)大分県文化スポーツ振興財団 TEL097-533-4004

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