Vol.38 2007 AUTUMN

OITA no MIRAI 大分新進芸術家紹介

クラシックギタリスト
竹内 竜次
Takeuchi Ryouji

「作品」というタイムマシンに乗せ
20世紀のパリに誘う

 2006年、ギターとマンドリンの専門店「フォレストヒル」から『Sonorite』というCDが発売された。別府市在住のクラシックギタリスト、竹内竜次さんのデビューアルバムである。20世紀初頭にパリで活躍した音楽家のナンバーを収録したこの1枚、なかなか聴かせると評判。実に目を閉じて聴いていると、世界中から才能ある芸術家たちが押し寄せてきた時代の華々しさや、戦争の影までが感じられて、さながら当時のパリにいるような気分にさせる。
 竹内さんは1976年、別府市生まれ。クラシックギターの講師だった父から、8歳の時に初めて手ほどきを受けた。だが友達と遊ぶのが楽しい年頃、練習をせずによく叱られていたそうだ。
 「何人もの先生に習ってきたけれど、父がいちばん厳しかった! 子どもの頃の話ですが、僕のギターには涙のあとが這っていたことも(笑)。それでもギターを嫌いになったことは一度もありません」
 そんな彼がプロを意識したのは別府青山高校時代。2年生で第18回全国学生ギターコンクール高校生部門優勝、第11回スペインギター音楽コンクール優勝。そして3年生で東京国際ギターコンクール首席2位に輝いた。受賞が続き自信という味方を付けた彼は、パリ・エコール・ノルマル音楽院への留学を決める。
 ところが渡仏後、とにかくいろんなことに打ちのめされたという。入学した年の生徒のレベルが稀にみて高かったのに加え、当然フランス語はわからず、初めてのひとり暮らしでご飯さえろくに炊けない状況。極めつけに、最初のレッスンで先生に「お前の音は鍵の束をガシャンと落とした(よくない)音だ」と言われて相当なショックを受けたという。「えらいところに来てしまった……」というのが第一印象だった。しかし、これに奮起してかつての練習嫌いな少年は1日に8時間練習するように。そうして得たものが、いまの竹内さんのスタンスにつながっている。
 卒業後、地元の別府に帰郷。父の開いた「サンシティ音楽院」でギターを教えている。その傍ら、全国のホールやお洒落なレストランなどで定期的にリサイタルも開いている。そして昨年、『Sonorite』を発表。
 「硬派なクラシックを収録したけど、次は大衆的なシャンソンをアレンジしたものをつくりたい。民族的な要素を持つギターはピアノなどに比べると楽器としての地位は低い。だから昔は〈ギターっぽくない演奏を〉と考えていて。でもいまは、ギターだからこそ出せる雰囲気、それが伝わる演奏を目指しています」
 竹内さんには、大手のレーベルからCDを出すような、第一線で活躍するギタリストにはない自由度があるという。それを存分に活かし、自分のスタイルを貫きながら楽しい演奏を聴かせてほしい。

デビューアルバム『Sonorite』、ソナタ/A.ホセ、歌と踊り第13番/F.モンポウ、南のソナチネ/M.M.ポンセ、ソナタ第3番/M.M.ポンセ、ガリシアの歌/M.M.ポンセ編、フォレストヒルレコーズ FHCD-20612 ¥2,940

「ソノリテ」とは「響き」という意味。竹内竜次さんのデビューアルバムは、フォレストヒルレコーズより発売中。

リサイタル用のギターはドイツ製のヘルマン・ハウザー。言うなれば「じゃじゃ馬。乗りこなしにくいからこそ魅力的」という名器。これでシャンソンの「僕の部屋に雨が降る」を弾いてくれた。陽気で軽快で楽しい生演奏に感動!

人生で最も影響を受けたのはジュリアン・ブリームのビデオ『ギターラ!』。「電車の中や漁船の上で楽しそうにギターを弾く」ところに小さい頃から憧れているのだとか。最近はジャズやシャンソンもよく聴く。マイルス・デイビスやシャルル・トゥルネがお気に入り。

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