Vol.38 2007 AUTUMN

Musical instruments to read
読む楽器

オーボエ

 演奏会が始まる。直線的で澄み渡ったオーボエの音色に弦楽器、管楽器と様々な楽器の音色が重なり合い、幻想的世界へ導く。オーケストラの中心で一番初めに音を出しチューニングをする楽器がオーボエである。
 オーボエの歴史はとても古く、古代ギリシャ神話に「アウロス」と呼ばれる二枚リード楽器が存在し、これが先祖と言われている。起源とされるのは、トルコで軍隊などが室外で使用していたもの。これが13世紀頃ヨーロッパへ渡り、17世紀頃にフランスで室内楽器用に改良されて「キー」のついたオーボエが誕生したのだとか。その後ヨーロッパを中心に親しまれるようになり、様々な曲で活躍をするが、かつて弦楽器のみで演奏されていたオーケストラに初めて入った管楽器でもある。
 初期のオーボエは、ボディにツゲの木を使用し、キーも二つだけだったため音程も悪く演奏に支障が多かった。
 改良を重ねられた現代のオーボエは色々な材質のものがでているが、一般的にボディには「グラナディラ」と呼ばれる黒く硬い木を使用し、その上に銀メッキを施したキーが複雑に組み合わされている。
 管は上管、下管、ベルの三つをつなぎ合わし、その先端にあしの木で作られたリードと呼ばれるものを差し込む。木管楽器はフルート以外でこのリードを使うが、オーボエの場合はダブルリードといい、上下2枚に組み合わされたリードを水に浸し、2枚のリードを振動させて音を出す。
 オーボエの音域は、2オクターブ強。おもに高音を担当するが息を入れるリードの隙間は非常に小さく、ほかの楽器は息が足りなくて苦しいのに対し、オーボエは息が余って苦しい状態になる。オーボエの心臓と言っても過言でないリードは、消耗品なうえに1本1本手作りなのだ。多くの奏者は自分にあったリードを自作しているが、リードの先端は0.04ミリ程の薄さに削るため失敗も多い。ナイフを持ち様々な小道具に囲まれ作業をする様は、演奏家というより職人と言える。
 ギネスブックに載っていたくらい難しい楽器ではあるが、その苦労を全く想像できない、なんとも魅力ある音色を奏でる。甘く哀愁漂う音色、軽やかで華やかな音色。その音色からは、いくつもの世界を想像してしまう。多くの作曲家もこの独特な音色を愛し、オーボエの美しい旋律が数多く残されている。
 優しい気持ちや、気分を和らげてくれるその音色は、クラシック音楽以外の分野でも聴くことが多くなり、人々の心に自然と流れるBGMとして身近な存在になっている。

文/川村幸代(かわむら さちよ)
オーボエ講師、大分県立芸術緑丘高等学校非常勤講師。別府市民交響楽団団員。7月に行われたオペラレクチャーに出演。

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