Vol.37 2007 SUMMER

特集 人形浄瑠璃 文楽 大分公演

Column

親子と恋人、それぞれの深き情愛

テノール歌手 山本裕基 やまもとひろき

profile 声楽家。大分県佐伯市出身。作陽音楽大学卒業、大分大学大学院修了。現在中学校教諭。日本人学校赴任の経験もあり、その際イタリアにおいてS.デベネデッティに師事。帰国後は教鞭を執りながら、大分県民オペラ、大分オペラアンサンブル、YOの会等に所属しテノール歌手として活躍中。

 今秋、iichikoグランシアタで行われるバーデン市立劇場歌劇《椿姫》に先立ち、ミニコンサート形式のレクチャーを開催します。そこで、講師に迎えるテノール歌手の山本裕基さんに、オペラ鑑賞を楽しむ秘訣を教えていただきました。

オペラは生で鑑賞してこそ

 オペラは「総合芸術」と言われるように、美術や演出、歌手の力量など、舞台を構成するすべての歯車がかみ合わなければ成立しない、豪華で壮大なステージです。それを「生」で見たときの臨場感や肌で感じる会場の雰囲気には、私自身、いつも何にも代えがたい興奮を覚えます。
 ところが、舞台鑑賞の経験がある人は、まだまだ少ないのではないでしょうか? 残念ながら、どうしてもチケットの値段が高かったり、地方に住んでいる人はなかなか公演のある都市部まで足を運びづらかったり、という壁を取り払えないのが実情です。そんななかで、「レクチャー」とは、オペラを観る「きっかけ」づくりとして極めて効果的な試みだと思っています。

教師、兼オペラ歌手

 きっかけとは、ほんの些細なことなのに、ときには人生に大きな影響をもたらすものですよね。私のことをお話すると、声楽の道を志したのはかなり遅くて、そのきっかけもひょんなことでした。中学3年生のとき、オペラ歌手だった音楽の先生の歌声を初めて聞いて、その響きや音量に痺れてしまって! それからというもの、ピアノを習い、コーラス部に入り、音楽に浸かってしまったんです。高校卒業後は就職するつもりでいたのに音楽大学へ進学してしまったほど。結局、音楽から離れられず、いまは教師として子どもたちに音楽を教えながら、地方オペラの草分け的存在である大分県民オペラなど、いくつかのグループにも所属し、テノールとして、様々な役を演じています。ちなみに大分県民オペラでは、今年9月に新作の「白蓮」が控えています。

舞台を生かす「レクチャー」

 話はレクチャーのことに戻りますが、日頃、私が行う音楽の授業でも、オペラを観るための導入のようなことをすることがあります。やはり、きっかけを与えたくて……。《魔笛》のオペラや歌舞伎の《勧進帳》を扱うことが多いのですが、まず生徒たちにストーリーを説明した後、「観てみたい?」と問いかけます。すると、「観た〜い!!」という強い反応が返ってくるんです。このように、レクチャーをすることで、本番の舞台に興味が湧き、より理解を深めることができる。とくに外国もののオペラの場合は、言葉がわからないという問題がありますから、あらかじめ解説をすることで、本番の舞台が生きてくる―つまり、レクチャーは楽しみを倍増させてくれるものなのです。
 今回のレクチャーは、二部構成になっています。まず第一部で、私とソプラノ歌手の吉原恵子さんが《椿姫》について、トークショー形式の解説を。休憩をはさみ、第二部では、《椿姫》の名場面をピックアップしたミニコンサートを披露。きっと、楽しいステージになりますのでお楽しみに。そして、10月のバーデン市立劇場オペラを、ぜひ生で味わってみてほしいと思います。

オペラ・レクチャー
日時会場 2007年7月7日(土) 13:30〜15:30 由布市湯布院公民館ホール 定員200名
2007年7月7日(土) 18:30〜20:30 iichiko Space Beリハーサル室 定員100名
2007年7月8日(日) 15:00〜17:00 宇佐市文化会館ウサノピア小ホール 定員300名
講師 山本裕基(テノール)、吉原恵子(ソプラノ)
出演 成清愛(フルート)、川村幸代(オーボエ)、
山口えつ子(クラリネット)、佐藤麻実子(ピアノ)、ほか
料金 1,000円(楽譜掲載小冊子付き・税込)
※事前予約が必要。各会場とも定員に達し次第締切。未就学児の入場はお断りさせていただきます。
主催・お問い合せ/(財)大分県文化スポーツ振興財団 TEL097-533-4004
後援/由布市教育委員会・宇佐市教育委員会

マリア・カラス/永遠のディーヴァ
東芝EMI/TOCE55918

 不世出のオペラ歌手、マリア・カラスの圧倒的な歌唱を収めたCDと、彼女の貴重な映像が観られるDVDのセット。トスカ、蝶々さん、カルメン、ヴィオレッタなど、さまざまな性格を持った役柄を、カラスは声でも見事に演じ分けていることがよく分かる。そして役者としても超一流だった彼女の存在感は時代を超えて語り継がれるだろう。

ヴェルディ/オペラ《椿姫》
ユニバーサル ミュージック/UCBD9003

 コヴェント・ガーデン王立歌劇場での公演の模様を、巨匠ゲオルグ・ショルティの指揮とルーマニア出身の名花アンジェラ・ゲオルギューとの組み合わせで1994年にライヴ収録したもの。名門劇場での華やかな雰囲気がよく伝わるだけでなく、この公演で世界的な名声を決定づけたゲオルギューの美しさがひときわ際立っている。

椿姫
アレクサンドル・デュマ=フィス 著/新庄嘉章 訳新潮文庫

 原作を知ると、また別の角度からオペラを楽しむことができるはず。ちなみに原作では、ヴィオレッタはマルグリット、アルフレードはアルマンという名前で登場している。また《マノン・レスコー》(プッチーニのオペラとしても有名)の小説本が暗示的に小道具として現れたり、マルグリットの死後のエピソードなども興味深い。

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