Vol.37 2007 SUMMER

emo presents!世界の才能に接近

歌舞伎俳優
中村 時蔵

なかむら ときぞう/昭和30年生まれ。四代目中村時蔵の長男。昭和35年4月歌舞伎座「嫗山姥(こもちやまんば)」の童ほかで三代目中村梅枝を名のり初舞台。昭和56年6月歌舞伎座「妹背山婦女庭訓」のお三輪ほかで五代目中村時蔵を襲名し、名題昇進。21世紀の歌舞伎を担う女方の一人。

歌舞伎の舞台を彩る
女方の放つ魅力

日本を代表する伝統芸能が描き出す
一本気な男と哀れな女の身分を越えた愛

 可憐な娘役から位が高く重みのある役まで幅広い役柄を見事に演じる歌舞伎俳優、五代目中村時蔵さん。歌舞伎界を代表する名女方として活躍中の時蔵さんが、弟でもある二代目中村錦之助さんの襲名披露公演で「番町皿屋敷」のお菊役を演じる。大分公演を間近に控え、本公演への意気込みや歌舞伎への想いを聞いてきました。

― 時蔵さんはお父様である四代目中村時蔵さんを幼い頃に亡くされていますが、どのような思いから歌舞伎役者になられたんでしょうか?

 父が生きていたら違う道もあったかもしれませんが、やっぱり誰かが継がないといけないですから。でもその分、六代目中村歌右衛門さんや、七代目尾上梅幸さんなどから色々なことを教えていただきました。親から教わる場合、親の知っていることしか教わりませんが、他の役者さんに教わる場合は、親が知らないことも教えていただけます。色々ではありますが、幸い私の場合は、女方として戦後の歌舞伎を背負って立ったお二人から教わることができ、本当に幸せだと感じています。

― 日頃色々なお稽古をされていると思いますが、一番舞台に活かされている稽古は何でしょうか?

 日本舞踊ですね。日本舞踊ができれば、歩き方や身のこなしなども自然とできるようになります。また、今は立役(男性役)にも踊りはたくさんありますが、江戸時代中頃までは、踊りは女方にしかなかったんです。そういう意味でも、女方にとって日本舞踊は大切です。

― 役柄の中で、得意なものは何でしょうか?

 今は年齢的に女房役ですね。性格も絡んでくると思いますが、女房役は補佐的な部分があるので、自分自身、人のために何かすることが嫌いではないので、やりやすい気がします。女方は、子供時代を経て娘役やお姫様の役に付き、それから遊女のような色っぽい役が付くようになって、その後は女房役というように終わりがないんですよ。これから勉強をしていかなければと思っているのは、古典の武家社会の女房役。だからと言って娘役やお姫様役を捨てる訳ではないので、それらの役柄も今まで積み重ねてきたことをより一層発展させて、膨らませていきたいと思います。

― 弟さんが二代目中村錦之助を襲名されましたが、叔父であり、映画俳優としても有名な初代錦之助さんとの思い出を教えてください。

 叔父が結婚する前は祖父の家で一緒に住んでいました。当時叔父は、映画の撮影で京都にいることが多かったのですが、時間がある時はよく遊んでもらいました。大人になってからは、一緒にお酒を飲みながら、歌舞伎をしていた頃の話もしてくれましたし、私たちの芝居を観に来てくれて、アドバイスをしてくれたりもしました。弟も叔父の錦之助のイメージにはなかなかならないと思いますが、身内だからこそ言えることを大事にしていきながら、一緒に頑張っていきたいですね。

― 今回出演される「番町皿屋敷」は、どのような演目なのでしょうか?

 有名な怪談話をもとに、岡本綺堂という作家が大正時代に書いた作品です。歌舞伎専門の狂言作者が書いた作品ではなく、外部の小説家などが書いた作品を新歌舞伎と呼んでいて、「番町皿屋敷」もこの新歌舞伎に分類されます。古典歌舞伎は三味線や鳴物などが多く入るのに比べて、新歌舞伎はそういったものをほとんど取り除き、どちらかと言えば台詞劇を中心とした、心理描写を大切にした芝居になっています。

― 見どころはどこでしょうか?

 私が演じるお菊という女が、愛する青山播磨という殿様の気持ちを試すために、家宝の皿を割ってしまう、その心理描写が見どころだと思います。お菊役は三度目ですし、播磨役の中村梅玉さんとも以前に同じ役を演じています。

― 同じ役を演じる時に、前回と演じ方を変えることもあるんでしょうか?

 相手が変わると同じ台詞でも息継ぎや伸ばし方も違うし、台詞が少し変わることもあります。そういう時は女方が歩み寄って対応しなければいけないと思うので、前回とは違ってきます。面白いことに、同じ人と同じ演目を演じても違ってくるんですよ。お互いに成長しているので、芝居の仕方が変わっていたり、前はできなかったことがクリアできていたり、逆にできていないことが見つかってどう乗り越えるか考えたりもします。だから約25日間やっていて、まったく同じようにできるということはまずない。でも芝居っていうのは、それでいいんじゃないかと思っています。

― 今後新たに取り組んでいきたいことはありますか?

 子供たちがそろそろ20歳位になりますが、その子たちをしっかり教育していき、これからの歌舞伎の発展に繋げていきたいですね。

― 最後に大分のファンにメッセージをお願いします。

 弟の錦之助襲名披露ということで、口上もあって華やかですし、演目的にもポピュラーなものが並びましたので楽しんでいただけると思います。

 女方として高い評価を受けながら、今尚目標を持ち進化し続ける時蔵さん。歌舞伎通の方はもちろん、歌舞伎に詳しくないという方も、ぜひこの機会に劇場へ足を運び、日本の伝統芸能「歌舞伎」の世界を体感してみてはいかがでしょうか。

平成19年度 公文協 西コース
松竹大歌舞伎
中村信二郎改め二代目中村錦之助 襲名披露
iichiko presents 大分公演(昼夜二公演)
日時 2007年9月5日(水) 
昼の部 13:00開演 夜の部 18:00開演
会場 iichiko グランシアタ
料金 S席7,000円 A席5,000円
B席3,000円 学生1,500円
出演 中村信二郎改め二代目中村錦之助、中村梅玉、中村東蔵、中村時蔵、尾上松緑、中村松江、松本錦吾、中村梅枝、中村隼人
演目 一 正札附根元草摺 長唄囃子連中
二 襲名披露口上 一幕
三 岡本綺堂作 番町皿屋敷 一幕二場
四 戻駕色相肩 常磐津連中
公演に関するお問い合せ/
(財)大分県文化スポーツ振興財団 TEL097-533-4004

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