Vol.37 2007 SUMMER

幕が開く前に|公演を楽しむための予習ページ

音楽の本当の楽しさが感じられる 室内楽に、ブームの予感

MAROプロジェクト2007 〜大分の若き演奏家たち〜

音楽を作り上げる楽しさを観客と共有

 2008年1月8日、音の泉ホールにて『MAROプロジェクト2007〜大分の若き演奏家たち〜』が開催されます。この演奏会は、大分で活躍する3組の演奏家たちを公募し、プロの演奏家による演奏指導及び演奏会を開くというもの。その指導と審査員を務めるのが、NHK交響楽団第一コンサートマスター”まろ“こと、篠崎史紀氏。「日本は室内楽がそれほど盛んではないので、この企画は色々なところがやりたいものだと思います」と語る篠崎氏。
 室内楽はオーケストラと違い小編成の器楽合奏音楽で、いわゆるチェンバーミュージックというもの。西洋文化が日本に入ってきた時オーケストラが先行したため、室内楽は文化としてなかなか根付きませんでした。「日本ではソリストの養成がすごく発達したので、国際コンクールとかではたくさんの人がとおるんです。でもそれによって、音楽の楽しみという部分を忘れていた気がします。最近になりようやく室内楽も普及し、これから室内楽を学んだ人たちが活躍しだす時。そんな中、大分で公募して演奏会を今やるというのはすごいことだと思います。ヨーロッパではよくありますが、最初聞いた時、日本でやるには5年は早いと思いました」。今、時代を先取りした演奏会が大分で開かれようとしているのです。

音楽を愛する人達の善意で開く演奏会

 現在東京ジュニアオーケストラの芸術監督も務めている篠崎氏。子供たちが自由に発想し、自由に演奏できる場所を作りたいという思いから発足しているので、このオーケストラには音楽をやりたいという強いエネルギーを持った子供たちが集まっています。「楽器をやるにはお金がかかります。でもなるべくお金をかけないで面白いことがやれる場所が一つぐらいあってもいいと思ったんです」と立ち上げ時の思いを語ってくれました。東京ジュニアオーケストラでは、月謝ではなくパトロネーゼを募り、この活動に賛同した人の善意のお金で、子供たちが自由に演奏活動を行っています。「僕も経験しましたが、ヨーロッパでは若い人たちが演奏会を企画する場合、教会での献金による演奏会を開くことが多いんです。それを是非日本でもやってみたかったんです」。
 オーケストラの設立から10年が過ぎ、卒業した子供たちの中には、プロの演奏家になった子もいれば、別の道に進みつつも音楽を一生の友としている人もいます。そして彼らは、それが音楽ではなくても、別の場所で同じようなボランティア活動をしています。「これだけで、このオーケストラは成功したんだと思います」。

東京ジュニアオーケストラ

素晴らしい音楽とともに音楽のエネルギーを感じる

 日本はもとより世界を舞台に活躍中の篠崎氏が、今回『MAROプロジェクト2007〜大分の若き演奏家たち〜』に参加されることについて次のように語ってくれました。「この話を頂いた時、前に進もうとするエネルギーを感じました。応募してくる人達は自分たちの全てのエネルギーを注ぎ込もうとするだろうし、企画した人も当然エネルギーを注ぎ込んでいます。そういうエネルギーのあるところに磁石のように吸いよせられるのが僕は大好きなんです」。そして、この企画で”和“を期待したいとのこと。「日本にはみんなが集まれる教会のような場所もないし、コミュニケーションもメールで済ますなど、全部が離れている気がしています。この演奏会は音楽を介して和をグッと寄せていけるチャンスでもあるように思います」。
 室内楽はオーケストラと違い、自分の意見を言い合いながら構築していく音楽。でき上がったものを一瞬で観るよりも、その作り上げていく過程も観ることで、楽しさは何倍にも膨らむコンサートになるでしょう。

篠崎史紀

しのざき・ふみのり NHK交響楽団第一コンサートマスター violinist
 3歳より、父、篠崎永育(しのざきえいすけ)にヴァイオリンの手ほどきを受ける。その後、田中玲子、江藤俊哉、トーマス・クリスチャン、イヴィリー・ギトリスの各氏に師事。また、バリリ・クァルテット、アマデウス・クァルテットのメンバーに室内楽を学ぶ。早くに天賦の才能を発揮し、毎日学生音楽コンクール全国大会第1位。1979年北九州市民文化賞を史上最年少で受賞し注目を浴びる。
 1981年よりウィーン市立音楽院に留学。1982年、ウィーン・コンチェルトハウスにて同音楽院のオーケストラと共演し、ウィーンデビュー。「信頼あるテクニック、遊び心豊かな音楽性」(ウィーナーツァイツング紙)、「真珠を転がすような丸く艶やかな音色、魅惑的な音楽性」(フォルクスシュティンメ紙)など好評を得る。
 第34回ヴィオッティー国際音楽コンクール(デュオ)で第三位。第20回ボルドー国際音楽祭でシルバーメダル受賞。その後、オーストリアを中心にヨーロッパ各国、アジア、アメリカなどで幅広い活動を行っている。
 1988年群馬交響楽団コンサートマスターに就任、1991年より読売日本交響楽団のコンサートマスターとして活躍、1997年よりNHK交響楽団第1コンサートマスターに就任。今後更なる飛躍が期待されている。
 NHK交響楽団、読売日本交響楽団をはじめとする全国主要オーケストラとの共演。ソロリサイタルのほか室内楽にも情熱を注ぎ、ハレー・ストリング・クァルテット、アンサンブル・SAKURA、イシハラ・リリック・アンサンブル、サントリー・フェスティバル・ソロイスト、ヴィルティオーゾ・アンサンブル・パルテノンのメンバーとして、毎回のコンサートが話題になる。
 完璧なるテクニックは言うまでもないが、パッションあふれる美音は他の追随を許さない。演奏活動の傍ら、後進の育成にも力を注ぎ、東京ジュニアオーケストラ・ソサエティーの芸術監督としてその育成にあたっている。
 これまでに11枚のCDをリリース。「音楽の友・ロマンティックを体験するための名盤50選」に選ばれた。「アレンスキーのピアノ三重奏曲第1番、第2番」、レコード芸術の特選に推薦された最新アルバム「レゾネート・エターナリー」をはじめ、いずれも好評を博す。また、音楽療法の分野から、WHO国際医学アカデミー「ライフ・ハーモニー・サイエンス」の評議委員もつとめている。
 2001年福岡県文化賞を受賞。2004年より、銀座王子ホールにて、篠崎史紀による新しいプロジェクト「マロワールド」が始動。内外からの話題をさらっている。
 その風貌から「まろ」の愛称で親しまれている。

N響のコンマスが伝える室内楽の醍醐味

 ヴァイオリンの恩師として私が4歳の頃からお世話になっている篠崎永育先生のご子息である篠崎史紀さん。クラシック界では「まろ」という愛称で知られており、現在NHK交響楽団のコンサートマスターとして活躍されています。そんな彼とは幼少の頃から共にヴァイオリンを習った仲であり、未だに「ふみ君」「まゆみちゃん」と呼び合う間柄なのです。

 篠崎さんがN響入団前に読売日本交響楽団のコンサートマスターを務めていた頃幼少時代から変わらな、私をゲストコンサートマスターというポストに抜擢してくださったことから、オーケストラや室内楽など度々同じステージで演奏してまいりました。い彼の温かい人間性と豊かな音楽性に触れながら共演することで得られるものが多く、彼の存在により余裕を持って音楽に集中できたものです。

 演奏家としての評判は実際の活躍ぶりを見ていただければ言うに及ばずですが、昨年、篠崎さんのヴァイオリンのレッスンを聴講させていただく機会がありました。受講生の可能性を見出しては、的確かつユニークを交えたアドバイスを与えるうちに、次第に子供たちの音色や音楽が伸びやかに変化し始めたこと、一日中教えているにもかかわらず、コーヒーを口に含む程度しか休むことなくレッスンを続ける情熱、そして、改善された箇所を必ず評価することを決して怠らない姿勢が印象に残っております。自分が指導する立場であるが故に、彼のレッスンはより一層勉強になるものでした。

 さて、私は現在大分県立芸術文化短期大学音楽科の教員としてヴァイオリン実技や室内楽、オーケストラなどの指導をしておりますが、学外では芸短の卒業生だけでなく、県内のアマチュアを含む音楽家の方々からもアンサンブルについての相談や指導の依頼を受けております。芸短も今年度から専攻科が2年制となり、「器楽アンサンブル」という科目が増設され、弦楽アンサンブル、ピアノや管楽器との組み合わせで編成される重奏など力を注いでおります。

 しかし、アンサンブルを学んだ卒業生たちが室内楽という形態で演奏を披露できていないのが現実で、その理由は大分に限らずですが、メンバーが集まらないこと、指導者がいないこと、活動の機会(演奏依頼)がほとんどないことなどが挙げられます。県内にも幾つかアンサンブル団体は存在するものの、それぞれ難題を抱えているようです。

 是非この機会を利用してアンサンブルに本格的に取り組み、今後の活動に生かしてみてはいかがでしょうか。また今回「公開レッスン」も企画されております。実際にレッスンを聴講することで弾き手と聴き手が同じ時間を共有でき、指導によって演奏が変わっていく過程を体感し、そして各グループが演奏会に向けて研鑽を積む姿にエールを送りつつ、クラシックは苦手と敬遠されてきた方々にも大いに楽しんでいただけることを期待しております。

川瀬麻由美

かわせ・まゆみ 大分県立芸術文化短期大学准教授 violinist
  桐朋学園大学卒業。東京シティフィルの副コンサートマスターを経て、読売日本交響楽団など日本各地のプロオーケストラのゲストコンサートマスターやサイトウキネンのメンバーとして、またソロや室内楽など国内外で活動。現在大分県立芸術文化短期大学准教授。

MAROプロジェクト2007 〜大分の若き演奏家たち〜

オーディションから本番までのスケジュール

オーディション
部門 A. 弦楽四重奏
B. ピアノ三重奏
C. クラリネット五重奏
締切 2007年9月20日(木)応募〆切  課題曲の録音MD/CDによる審査
公開レッスン
日時 公開レッスン?
  2007年10月30日(火) 13:00〜15:00、15:30〜17:30
  2007年10月31日(水) 10:00〜12:00
公開レッスン?
  2007年12月 6日(木) 13:00〜15:00、15:30〜17:30
  2007年12月7日(金) 10:00〜12:00
会場 iichiko Space Be リハーサル室
講師 篠崎史紀
料金 入場料500円
コンサート
日時 2008年1月8日(火)
会場 iichiko 音の泉ホール
内容 第1部 オーディション通過者3組による室内楽コンサート
第2部 芸術監督 篠崎史紀によるヴァイオリンの名曲コンサート
料金 全席指定2,000円 学生1,000円

オーディション実施要項

1 参加資格
演奏者の半数が、大分県出身者あるいは大分県内在住であること。
大分県内での演奏活動の実績があること。
2007年9月1日現在、演奏者全員の年齢の合計が
  A. 弦楽四重奏 160歳以下
  B. ピアノ三重奏 120歳以下
  C. クラリネット五重奏 200歳以下
  であること。
2 課題曲(CDまたはMD)
A.弦楽四重奏
ベートーヴェン:弦楽四重奏曲第1番〜第6番Op.18-1〜6
モーツァルト:弦楽四重奏曲第14番〜第19番 「ハイドン・セット」 など
B.ピアノ三重奏
メンデルスゾーン:ピアノ三重奏曲第1番 Op.49
ベートーヴェン:ピアノ三重奏曲第5番「幽霊」Op.70-1・第7番「大公」Op.97 など
C.クラリネット五重奏
モーツァルト:クラリネット五重奏曲 K.581
ブラームス:クラリネット五重奏曲 Op.115 など

いずれの部門も以上から、任意の1曲の第1楽章のみを録音すること。
*詳細はお問い合わせください。
主催・お申し込み・お問い合せ/ (財)大分県文化スポーツ振興財団 TEL097-533-4004

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