Vol.36 2007 SPRING

OITA no MIRAI 大分新進芸術家紹介

能楽研究家
青木 涼子
aoki ryoko

撮影協力/久良岐能舞台

伝統文化と現代音楽の融合が
新たな「能」の世界を生み出す

 東京芸術大学音楽学部邦楽科にて能楽観世流シテ方を専攻、同大学院修士課程を修了。現在はロンドン大学SOAS校にて「女性と能」に関する博士論文を執筆の傍ら、パフォーマンスユニット「company izuru」のメンバーとして国内外で活動を展開している青木涼子さん。8歳からクラシックバレエをやっていた彼女が能に出会ったのは中学生の時だった。「日本人の自分が西洋の音楽に合わせて踊ることに違和感を覚えていたんです。そんな時、テレビで能の鑑賞講座を観て、まずその音楽の素晴らしさに魅かれ、この音楽に合わせて体を動かしてみたいと思い、大分市の能楽堂で行われていた初心者向けの能楽講座を受講しました」。
  日本の伝統文化である能楽をもっと詳しく学び、極めてみたいという思いから東京芸大に入学。同級生のほとんどが能の家系の子という中、挨拶や話し方、先生へのお茶の出し方など知らない作法が多く、最初は慣れるのに苦労した時もあった。休日も勉強のために能を鑑賞し、能のみに打ちこむ日々を過ごしていたが、芸大にはいろいろな芸術を学ぶ人たちがいるのにもかかわらず、能だけに関心を注いでいくことに疑問を感じていたという。大きな変化が訪れたのは、大学3年生の時。東京芸大に教授としてやって来た能楽界の重鎮、野村四郎氏との出会いだ。「野村先生は、他分野の方たちとの交流や新しいものを創造することを推奨し、古典の中でどのように創造していけばいいかを教えてくださいました」。その教えを受けて辿り着いたのが、学内の演奏会で行った能オペラ。それが作曲家、演出家と共に立ち上げたユニット「company izuru」の現在の活動に結びついている。
  2004年ニューヨーク、2006年ロンドンで公演し、主役を演じた作品『NーOPERA MACBETH』では、”能楽と現代音楽を使って新しいものを創りたい“という気持ちを形にすることができた。「海外ではシェイクスピアなどの古典作品を新演出で見せることが多いんです。そういう現代的な表現に慣れていることもあり、能とオペラでシェイクスピアを表現することに興味を持ち、受け入れてもらえたと感じました」。今後もオペラに限らず、様々な現代音楽と能を融合させた作品を創作していきつつ、「若い世代による日本伝統文化の新しい解釈を見せたいですね」と熱い眼差しで意欲を語る。いつか大分の舞台で、さらなる進化を遂げた能を目にする日が来ることを期待しつつ、今後の活躍に注目したい。

扇は、稽古用と舞台用、そして役柄によって使い分けている。これは舞台用で、流儀の決まり柄をアレンジしたもの。能では、役によって使用する扇に決まりがあるため、このように様々な色が入っているものの方が、幅広く活用できるのだとか。

3枚とも現代音楽の巨匠、作曲家の湯浅譲二氏の曲集。2月にトーキョーワンダーサイトで行われた湯浅氏のコンサートに謡として出演した。このCDは公演に向けて用意したものだが、普段から現代音楽を聴くことは多いという。能の音楽は、勉強のために聴くことはあるが、BGMとして流すことはないようだ。

N-OPERA MACBETHロンドン公演

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