Vol.36 2007 SPRING

Musical instruments to read
読む楽器

ジェンベ

 「カラカタッ! コロカコロカコロ トパラッ ブン!」
  その音が聞こえてくると人々は集まり、しだいに輪となり、いつの間にか体が揺れ、手を叩き、歌を歌い、踊り出す。その生命感に満ち溢れ、ドライで明るく、おしゃべりなジェンベの音は、他の民族楽器同様、それが生まれた土地の風土や人柄を想像させ、思いを遥かアフリカの大地へといざなう。
  ジェンベは西アフリカの伝統楽器。ある時期にいきなり出現したとは考えにくいが、今の形状に定着したのは13世紀頃と言われている。かつて外国の植民地支配によって国境が引かれる前、ギニア、マリ、セネガルを中心とする一帯はマンデ王国として栄えていた。ジェンベはギニアとマリの国境付近がふるさとと言われ、収穫祭や結婚式などのお祭り、祈願、御払いの儀式から、満月の時、子供の名前を付ける時、若者の出会いの祭りなど、生活の様々な場面でかかせない楽器として存在している。
  硬い木が刳り貫かれたボディーは高さ60センチ、口径30センチ程で、打面にはヤギの皮が張られ、胴と皮を繋ぐ紐を編んでチューニングをする。
  基本の音は三種類。手のひらを面の縁に当てて鳴らすトーン(中音)とクラック(高音)、面の中央で鳴らすベース(低音)。この音を叩き分けるには時間がかかり、話し言葉のようにジェンベを操るジェンベフォラ(名人)は、「精霊と話ができる」と言われ敬われている。
  その音はサイズからは想像できないほど大きくクリアな音で、古くは村と村との通信手段に使われたという話も納得ができる。日本では、初めて聞くその音に感嘆の声を上げる人も多いが、一方で周りの住民からの苦情もしばしば。やはりアフリカとは違い、狭い土地の中ではなかなか肩身の狭い楽器であるというのも事実である。しかしながら、こういう日本でも各県に必ずと言っていいほど2、3のジェンベグループが存在し、特に九州には500人を超えるジェンベプレイヤーがいると言われ、かなりの盛り上がりを見せている。
  祭りや儀式は商業色が強くなり、コミュニケーション手段の機械化に違和感を覚えはじめた現代の日本人にとって、この楽器の音は、どこか懐かしさを感じさせるものなのかもしれない。

文/西アフリカ楽器奏者 榎本裕二 (えのもとゆうじ)
現在、アフリカン打楽器グループ”FOLIKAN(フォリカン)“で福岡を拠点に活動中。平成19年7月1日(日) iichikoグランシアタにて開催する、ステージレクチャーコンサート「響け! アフリカの魂」に出演。パワフルで躍動感あふれるステージにご期待ください。
フォリカンHP/http://www.geocities.jp/folikan/

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