Vol.35 2007 WINTER

翻訳家・演出家・劇作家
青井 陽治

あおい ようじ/1969年、劇団四季演劇研究所に入所。多数の舞台に出演すると同時に翻訳・訳詞・劇作も行う。1976年よりフリーの翻訳家、演出家、劇作家として活動し、海外戯曲の上演やミュージカル創作など独自の世界を築く。第3回湯浅芳子賞翻訳・脚色部門を受賞。第3回、第6回読売演劇大賞優秀演出家賞受賞。

人と言葉が描き出す世界
そこに秘められた演劇の魅力

大掛かりな仕掛けは一切ない、シンプルな舞台
一組の男女が織り成す普遍的な愛の物語が会場を包み込む

 1989年にニューヨークで初演され、全世界で静かなブームを巻き起こした『LOVE LETTERS』。日本では1990年に幕を開け、これまでの出演者は130組以上、公演数は300回を超える。このリーディングドラマ(朗読劇)が国境を超えて日本で初上演されて以来、ずっと翻訳・演出を手がけている青井陽治さんに『LOVE LETTERS』への想い、その魅力を聞いてきました。

― 舞台に興味を持つようになったのはいつ頃ですか?

 子どもの頃から家族で宝塚歌劇などを観に劇場へ行っていました。5〜6歳の時に『ホリデイ・オン・アイス』というアメリカから来たショーを観て、舞台の熱気と降りかかる氷の飛沫、その熱いものと冷たいものが同時に押し寄せてくる感覚に興奮したのが最初に舞台にはまった瞬間だと思います。

― 劇団四季では出演と同時に翻訳や制作もされていたそうですが、元々は役者志望だったのでしょうか?

 劇場でできる仕事であれば何でもやってみたいと思っていましたが、当時の僕は作家や演出家は大人がするものだという思いがあって、若いなりに役のある俳優から始めました。劇団四季の研究生は3年間のカリキュラムが組まれていましたが、入団した翌月に欠員が出て舞台に立つことになったんです。その時授業に出席できない代わりに提出した舞台出演の感想日記の文章が、劇団四季代表の浅利慶太さんの目に止まり、入団時に学生時代にやった共訳書の経験を伝えていたこともあって、翻訳をすることになりました。その後オリジナルも書かせていただいて、チャンスを与えてくれた浅利さんには感謝しています。  

― 現在も翻訳に演出、制作と忙しい毎日だと思いますが、仕事以外の時間はどう過ごされていますか?

 人より先に入手した戯曲を読んで、どのタイミングで日本で上演しようかとか、常に頭の中で20本くらい動いているので、他のことは何も考えていません。『コーラスライン』を作ったマイケル・ベネットに「演劇は職業ではない、病気だ」と言われて、本当にそうだなと共感しました。

― 今後挑戦してみたいことはありますか?

 日本の芝居も好きなんですが、海外の芝居の人だと思われていたみたいで(笑)、ようやく近年、久保田万太郎や永井荷風など日本語で書かれた芝居を演出する機会をいただけるようになりました。国内外問わず新しい動きに対していつも敏感でありたいと思っています。

― ストレート・プレイ(台詞劇)の魅力はどこにあると思いますか?

 人間と言葉ですべてを描き出せるところです。演劇の基本はそこにあると思います。言葉さえあれば、劇作家が優れていて演出家がバカでなければ(笑)、大自然も哲学も政治や経済の問題も、すべて描くことができます。

― では、『LOVE LETTERS』はどのようなところに惹かれたのでしょうか。

 男女間に純粋な友情があったら素晴らしいだろうなという、誰もが抱いている想いを見事に抽出して見せながら、その辛さもきちんと描いていて、限られたやりとりの中でこんなにも人生や愛を語れるのかと、純粋に戯曲として惹かれました。当時は映画が特殊撮影で何でも見せられるようになり、演劇も負けじと芝居の仕込みが大掛かりになってきていたんです。音楽業界でも仕込みの巨大化が極限まで来て、ロックのリーダーたちがアンプラグドを唱え始めていました。演劇がテーマパーク化した時代に『LOVE LETTERS』を上演することは、演劇のアンプラグドをやることだと思いました。

― 毎回出演者が変わり、しかも稽古は1回だけと聞きましたが、それはなぜですか?

 アメリカでは1組につき1週間ずつ公演していましたが、日本は誰かの持ち歌を他の人は歌わない、演劇の世界でも同じような傾向があったため、色々な人が演じるという実績を早く作りたくて1組1回にしました。人によってまったく違う表情を見せてくれるので、毎回新しい発見があります。稽古が1回なのは、作家A.R.ガーニーの意向です。つまり、1回でできない人はやるなということ。この芝居のために何か学んだり付け足したりしない、ジャズの名手同士のセッションのような舞台をガーニーは望んだのだと思います。

― 大分公演では田中美里さんと北村有起哉さんが出演されるそうですね。

 2人には以前にも出演していただいて、その時は、有起哉さんが持つ強烈な個性と同時に、お父さん(北村和夫)譲りの新劇魂のようなものがとてもいい形で出て、正統な演劇人の存在を感じました。美里さんは、スケールと振幅の大きさが魅力。2月の大分公演では、2人とも汚れた部分や歪んだ部分も含めて、一番面白い自分を舞台で出してもらえればと思っています。

 観客には、感受性を100%オープンにして『LOVE LETTERS』の世界を受け止めて欲しいという青井さん。派手な照明も音響もないシンプルな舞台で繰り広げられる純愛のドラマを、劇場に足を運んで実際に感じてみてはいかがでしょうか。

日時 2007年2月14日(水) 
昼の部 18:30開場 19:00開演 
会場 iichiko音の泉ホール
出演 田中美里、北村有起哉
A.R.ガーニー
演出 青木陽治
企画・製作/(株)パルコ 協力/パルコ大分店
料金 全席指定5,000円 
学生席2,000円(25歳以下当日指定)
公演に関するお問い合せ:
(財)大分県文化スポーツ振興財団 TEL097-533-4004

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