Vol.35 2007 WINTER

テノール歌手
土崎 譲
tsuchizaki joe

楽譜の先に広がる
歌のイメージが音楽の魅力

 東京芸大の声楽科卒業後、同大学院修士課程オペラ科修了、そして第17回奏楽堂日本歌曲コンクール第1位、併せて中田喜直賞受賞など、今最も注目されるテノール歌手の一人、土崎譲さん。テノール歌手を目指したのは高校1年の頃、音楽の試験で歌った後、先生に芸大を勧められたのがきっかけと言う。
  しかし学生時代はアルバイトや語学留学などにも興味が向き、今になって振り返ると歌に本腰をいれているとまではいかなかったのかもしれない。だがそういった経験をふまえたからこそ、より歌の魅力にハマっていったのだ。「中々深まらない時期もありましたが、今がごく短い自分の音楽人生の中で最も歌に熱中している時期だと思います。それまでは本番に間に合わせるために練習し、本番=締切みたいな感じがありましたが、今はやり続けている中で演奏会が経験できるようになり、流れが継続的で、モチベーションも高いですね」と語る。
  演奏会やオペラの舞台に加え、オーディションや合唱団の指揮など、精力的に音楽活動を展開する中で、06年夏、大きな影響を与える人物と出会う。世界的指揮者のチョン・ミョンフン氏だ。「モーツアルトの『魔笛』でご一緒させて頂きましたが、とにかく自分自身の表現を大事にして歌うことを教えてもらいました」。ミョンフン氏ほどの指揮者になると、本人が意図しなくても自然と演奏家にプレッシャーを与えがちだが、とにかく自由に歌うことだけを熱心に指導され、かつてないほど伸び伸びと歌うことができたと言う。「学生の頃は楽譜に書いてあることだけをやろうとしていましたが、彼との出逢いもあり、最近は考えがガラッと変わりました。楽譜にフォルテと書いてある意味を考えるようになったんです。結果的にフォルテに聞こえればいいのであって、その意味を自分なりに解釈していくとすごく音楽が自由になりました」。そして楽譜に書いてある意味だけでなく、歌詞にある言葉の一つ一つも大切にするようになったという。「歌詞の意味を調べるために辞書をひきますが、単に意味を調べるに留まらず、その言葉から受けるイメージを持っておかないと人には伝わらない。声量とかではなく、その中身まで伝わるような歌い方になったのは、もしかしてここ1〜2年ぐらいなのかもしれません」と一歩壁を超えた笑顔で語る。そして今後はよりスケールの大きな歌い手を目指し、宗教曲やオペラだけでなく、大分で育った経験をいかし、日本歌曲にも力を入れていきたいと言う。素晴らしいテノールの音色と大分の自然が結びつく、そんな歌声が聴ける日を楽しみにしたい。

16歳までは音楽よりも野球や剣道などのスポーツに夢中だったという、以外にも体育会系。趣味はバイクだということもあり、近郊での仕事の時にはバイクで行くこともあるとか。音楽専門誌より先に、バイク雑誌の方が先だったというのも面白い。

暇さえあれば、読書をしているという。本は活字からその世界をイメージするが、イメージを聴いている人に湧き起こさせるという点で歌とも密接に関係しているので、読書は本当にいい勉強になるようだ。

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