Vol.35 2007 WINTER

Musical instruments to read
読む楽器

 三味線の伝来には諸説あるようだが、中国から沖縄を経て永禄年間(1560年頃)に大阪の堺にもたらされた、というのが定説である。
  そして伝来当初、琵琶法師らによって演奏されたため、ピック状の爪型撥ではなく銀杏葉型の撥が使われるようになった。また本州では大きな蛇がいないので犬や猫の皮が代用されることになった。
  こうして徐々に日本独自の姿になっていったのであるが、江戸時代の声楽音楽の発展に伴なってさらに多様化する。
  それを棹の太さで分類したのがいわゆる細棹(長唄等で使用)や太棹(主に義太夫節で使用)で、音色の特徴としては細棹は繊細で澄んでおり、哀愁と粋を一緒に感じさせる。それに対し太棹は力強く大きな音がする。また聞いていて安心感があり何より人を酔わせる。
  この太棹を使用するのが前述の義太夫節であり、通常は太夫・三味線各一人ずつで演奏する。
  太夫の芸は「語る」芸と言われ唄に較べ格段に写実性と力強さを要求される。自然三味線もそうなってくるので「三味線を弾くな、浄瑠璃を弾け」や「心で弾いて手で弾くな」が究極の芸になり、たった一つの音を弾くのにも悩むのである。また「弾くのは簡単、弾かんのが難かしい」というのもあり、伝統芸とは本当に奥深いものである。
  力強さの面では打楽器的要素が最も発揮されるのが義太夫三味線である。糸を弾くと同時に皮を激しく叩く演奏法もあり、あまりの撥の衝撃に皮が破れることもよくある。
  とかく西洋音楽に馴れた耳には分かりにくいとされる義太夫節だが、何も一言一句、一音々々を追う必要はない。じっくり聞いて場面や人物をゆっくり想像されるといいと思う。それが太夫の語りや三味線と一致した時、もう義太夫の虜になっているだろう。あなたも三味線に合わせて首を振ってみませんか。

文/豊澤龍聿 (とよざわ りょういち)
11月27日〜28日の文楽レクチャーでも、「文楽」が身近に感じられるように、わかりやすくお話をしてくれました。
撮影協力/芳村伊久之介

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